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中條 颯太(ちゅうじょう そうた)
西島 皐月(にしじま さつき)
***
「ーー…今この瞬間、世界が滅んでしまっても悔いはないと思った。想いが通じ、愛する人の温もりに抱かれている今、それ以上の幸せがこの世にあるだろうか。いや、ないに決まってる。けれどやはり死ぬのには惜しい。ずっと憧れ続けた恋人というポジションに立っているのだ。ずっと夢見たことを実現させたい。デートにだって行きたい。今までは鼻で笑っていたけれど、暗い映画館でひっそりと手をつなぐ、なんてベタな事も、お前とならやってみたいって、そう思えるんだ。心の奥底からこみ上げてくるものを感じた。そしてそれは俺の目から涙という形で溢れ出す。『泣いてるのか?』少し体を離して顎を持って確認するように顔をあげられた。確かにそこには涙が浮かび更には頬を濡らしていたのだけれど、俺はゆるゆると首を振って否定を示した。そんな俺をみた隆司はフッと優しく笑って俺の涙にひとつキスを落とした。そこから伝わる暖かい温度に更に泣きそうになる。ああ、好きだ、どうしようもないくらいにこいつが好きだ……ーーっああああああああああああああああああああああああああ」
「うっせえうっせえ発狂すんな!」
読んでいた本を閉じて胸に抱き、たまらないと言ったようにゴロゴロとフカフカのカーペットの敷かれた床に転がり回る。
やばいもうちょう興奮!滾る!こんな山奥の学校なんて色々と不便でしかないけれど通販してまで買った甲斐あった。ああ…!ジーザス!ありがとう!ありがとう!!
「ぁああああこの興奮をどこに!どこにぶつければいいんだぁああ!」
「だからうるせえって言ってんだろ!!」
「痛った!!」
ソファーに座ってブチ切れていた奴に思いっきり蹴られる。痛い。
「痛いよさっちゃん~」
「うるせえんだよ変な本読み上げるな叫ぶなあとさっちゃんて呼ぶな」
「またまたさっちゃんのツンデレさんめ!」
お察しの通り俺は腐男子と呼ばれるものです。親は普通に会社を経営していて兄が二人の姉一人、末っ子として自由奔放に生きていたらこうなった。
この学園に入学したのはもちろん趣味からくる下心のせいだ。人里離れた全寮制の!男子校!おいしそうなにおいしかしない!と、薔薇の花園に入学し早くも一年と5ヶ月、ホモ、おいしいです!
さっちゃんこと皐月は、寮の同室者で、この学園は特例以外では卒業まで部屋替えをしないから、そこそこに長い付き合い。綺麗な顔立ちのパツキン不良さんです。だからこそ美形の睨みは怖い。でも皐月はそこら辺にいるナウなヤング不良みたいに手当たり次第にキレたり理不尽振りかざすような事をしない外見はヤンキーなんだけど、中身は普通にいい人パターンの人間だ。現に、俺の趣味がバレた時も多少驚いてはいたけど拒絶する事なく受け入れてくれている。薔薇世界でもめちゃくちゃおいしい不良さんだ。
普段は一般ピーポーを装っている俺だけど、皐月にバレてからは部屋では萌えを叫ばせていただいている。今までは声を出さずにベッドにゴロゴロしていただけで、もう、この開放感がたまらない!叫べるって幸せ!
「ー…ってあれ?さっちゃん手ケガしてんじゃん!」
「あ?あーさっきちょっと暴れた時にできたのか…」
「血出てる!手当しなきゃ!」
「いいっつーのほっときゃ治る」
「駄目だって毎回言ってるじゃん!ほら!手出して!」
遠慮する皐月を余所に救急箱を開く。売られた喧嘩は買う派の皐月は生傷が絶えなくて、あの美人さんに傷が残ったらたまらん!と言うことで救急箱の中身は常に豊富に備えている。それでも当の本人である皐月はめんどくさがって手当てしようとしないから、毎回俺が手当てしているから、俺の処置スキルも右肩上がりだ。
「…っ、」
「痛い?」
「…んなもんなんともねえよ…」
痛いのに!絶対に痛いのにそっぽ向いて強がってる不良!まじかわいいおいしいホモ的な意味で!と言うのを口に出したら殺されるので心の中で騒ぐ。
俺の趣味がバレた時にした約束。俺の趣味を誰にも言わないこと、そして皐月は俺に皐月で妄想しないと誓わされた。皐月はこの学園で貴重なノンケだから男とどうこうなるつもりは無いらしい。正直惜しいと思う。こんなに萌えポイントを持った美人不良がいるのに。それでも皐月が嫌がるならと、多大な妄想を口にしたことはない。頭の中では大変な事になっているけれど。
「はいっ、これでオッケー。男の勲章だとは思うけどやっぱり心配だし…ケガとか気をつけてね」
「おう、サンキュ」
「あ…そういえば服の下とか平気?さっちゃん気づいてないだけであるかも」
そう言って皐月の着ていたシャツを思いっきり捲り上げる。そうするとおへそと綺麗に割れた腹筋と色の薄い乳首とご対面した。んんんん卑猥だな~エロ乳首~とかいう邪念を振ってケガが無いか見る。
「うわっ!!」
すると瞬間、前にいた皐月に思い切り押されソファーから落とされた。
「………は?」
「わ、悪りぃ!!」
ぱちぱちと瞬きをしつつ呆然としたまま天井を見つめていると、皐月が慌てて俺を引っ張り上げた。
「なに…なしたの……」
「いや…ちょっといきなり捲られるからビビったんだよ……」
「え、そうなの……」
気まずそうに視線を泳がし、後頭部をガシガシとかく皐月。心なしか顔が赤くて、恥ずかしかったのかな、なんて思い少し反省した。やはり親しき仲にも礼儀ありとはこの事だろう。
「悪かったな…それとこれサンキュ、俺もう寝るわ」
「あ…うん、俺もごめんね急に……おやすみ」
どことなく気まずさを残したまま、皐月は自室へと入って行った。それにしても本当になんだったんだろうか…。というか、少し皐月がおかしかったような気がする。恥ずかしかったらいつもは暴言と、あとそこまで痛くないスキンシップ程度の暴力を振ってくるのだけれど。今日は突き飛ばされはしたけど、その後頬を赤らめて視線を泳がすから、なんだか妙な空気になってしまった。本当にどうしたんだろう。
「う~ん…?」
答えの見えない疑問にハテナを浮かべながら皐月の入って行った扉を見つめた。
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