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真っ先に自室に避難し鍵を掛けて布団を被る。ドクドクと脈打つ鼓動がうるさいくらいで、心臓も頭もパンクしそう、というかしてしまいたい。
どっどっ、どどどどどうしよう!どうしよう!言っちゃった!言っちゃった!好きって言っちゃった!!ああ時間よ戻れ!戻らなーい!!
激しい後悔に溺れていると、ガチャガチャッとドアノブが捻られる音がした。
「おいっ、颯!」
「っっぎゃぁあああ!すいません!すいません!」
「なに逃げてんだよ!開けろ!説明しろハゲ!」
「あぁああどうかご堪忍を~!」
ガチャガチャという音に加え荒々しくドアが叩かれる音もし始める。ドンドンガチャガチャと軽くホラーな状況に恐怖し布団を握る手に力が入る。
「おいテメェ良い加減にしろよ!今すぐ開けねえとドア破り倒すぞあぁ!?」
「やーめーてー!!!」
「テメェが男同士の色事で興奮するマニアックプレイ好きの変態童貞野郎って今外で叫んでやってもいいんだぞ!!!!開けろ!!!」
「やめてください!やめてください!だけど鍵は開けらんない!!!むり!しぬ!!」
「このヘタレ野郎!!お前俺の事好きなのかよ!!!」
「あぁもう好きだよ!好きです!!アイラブユー!!だからなに!?ほっといて!!今俺傷心中なんだからぁあ…」
もうヤケクソになって好き好きと叫んでる俺は馬鹿丸出しだ。ヤンキー怖い不良怖い。口悪すぎ。童貞ってことはトップシークレットなのに!ひどい!
布団の隙間から枕を取って抱き締める。今傷ついた俺の心を温かくしてくれるのは布団と枕、お前らだけだよなんて現実逃避をしつつ皐月の出方を伺うと、先ほどまでけたたましいくらいだった音が一切止んでいた。
あぁ、完璧に引かれた、向こうはどうとも思ってねーのに気持ち悪ぃーって、引かれた。そう思っていたのに、しばらくすると聞こえてきたのは、皐月の嗚咽だった。
「……え?あ、は?…皐月、泣いてる?え?そんなにキモい?え?え?」
「うっ、ぐすっ…いいから開けろハゲ」
興奮して罵っていた時とは違って、嗚咽混じりに低い超えで開けろと言う皐月。なんというか俺は皐月の涙に弱くて、皐月が泣いてる!と思ったらなにも考えずに布団を飛び出して鍵を開けていた。
途端、思いっきり扉が開かれたかと思えば次の瞬間には皐月が飛びかかるように抱きついてきたのだった。
「うおっ!」
情けなくも支えることができなかった俺はヨロヨロとよろけた果てにズドンと尻もちをついてしまった。あぁかっこ悪い、なんて考える暇もなく置かれた状況に悩まされた。
「さ、つき…?」
とりあえず距離を取ろうと、皐月の肩に手を置いて力を入れたのだけれど、その瞬間に動くんじゃねえ!と、逆方向に皐月が力を入れたため、びっくりして俺はただ手を即座に離し所謂降参のポーズをしていた。
ぐりぐりと俺の胸のあたりに額を押し付ける皐月。胸元が濡れて行くのが分かって、ズキンと心が痛む。皐月の真意が分からないためどうしようもない。だから俺はゴクリと唾を飲み込み意を決して手持ち無沙汰になった手を皐月の背中に回して、片方は腰を抱き、片方は嗚咽に時々揺れる背中を撫でた。置いた瞬間にビクリとされはしたが、拒まれることはなかった。嬉しかった。
「………好きだ」
「……おん?」
皐月の背を撫で続けてしばらくした時、だいぶ落ち着いた皐月の第一声がそれだった。
「………」
「………」
「……っ、」
「……誰を?」
暫く間を置いて出た声はだいぶ酷い声だったと思う。喉から絞り出すかのように出てしまったから。しかも震えてしまって。明らかに緊張してます、みたいな。
「…お前を」
「………誰が?」
「……俺が」
「……す、き?」
「………」
………。
無言は、肯定。ぎゅって抱きつく力が強くなったのも、きっと肯定。
皐月が、俺を、好き。
「は!?ちょ、ちょちょちょ説明求む!?」
「…は?そんなのねぇけど」
「え!?好きって!?ラブ?ライク?フェイバリット!?」
「………ラブ」
「かっ、かわいい…!」
ぎゅうぎゅうと抱きつきながら顔も上げずに恥ずかしそうにラブと呟く皐月がもう、かわいくてかわいくてかわいくて…!
「ほんとに…?」
音もなく頷く皐月。
貧血で倒れた筈なのに、ドクドクと脈打つ鼓動と全身を巡る血液のせいでかぁっと体温が上がって行くのが分かった。
「やば…めっちゃ嬉しい…」
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