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29 過去編
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「ただいま〜。
今日さあ、もう先生が……、
なに、が、あったの。」
絶句した。
いつも僕より帰りが早い母さんはともかく、なぜか父さんまで家にいたのだが。
「どういうこと?」
家の中にあった生活用品や家具やらが全部なくなっていて、三人で引っ越してきたばっかりのときみたいだった。
「いいか、よく聞けよ。
お前の母さんは最低な女だったんだ。
俺以外の男作って、そいつに貢いで借金までして。それも闇金から。
家の中にあったものは根こそぎ持って行かれたよ。お前のものもな。
全部だ。全部。
それで、俺は連帯保証人じゃなくてお義父さんにしてもらってたみたいだから…。
離婚することにしたんだ。」
「え?うそでしょ?どういうこと、わ、わけわかんないよ!」
「それでも!分かってもらわないと困るんだよ。
そこで親権なんだがな。お前が好きな方を選べばいいと思ってる。
父さんは、もう一度やり直す。
できれば、一緒に暮らしたいと思ってるし、こんな奴といるより幸せにさせてやれる。
でも、もし万が一にでも、母さんと暮らすっていうんなら、反対はしない…。
さあ、選べ。」
頭がパニックになってなにがなんだか分からなかった。分かれと言われても無理だ。
ただ、幼心に、もう修復不可能なんだということは悟っていた。
どのくらいの時間が経ったのかわからない。
状況も上手く把握できていない。
それでも。
ずっと一緒に仲良くやってきた母さんのことをこいつ呼ばわりする父さんより、部屋の片隅にうずくまって泣いている母さんの方がよっぽど弱く見えたから。
男の僕が守ってあげなくちゃって思ったから。
「誘ってくれてありがと。僕は…
母さんを支えるよ。」
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