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35 過去編
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「…、はぁ。わかったよ。そこまで言うなら、修司に頼んでみる。
けど、俺だってそんなに金があるわけじゃねんだからさ、変な期待はすんなよ?」
お兄さんにそう言われて数日経った。
それまでの間、俺は母さんも帰ってこないこの家で、ただ、ひたすらに、待っていた。
そして、少しまえまで仲睦まじく暮らしていた、幸せな家族のことを思い出していた。
一つ一つの部屋を回って、思い出を振り返っていた。
そんなことをして、ボーッとしていたら、お兄さんの声が聞こえた。
「おい!いるか!」
ドタドタと音をたてながら、急いでお兄さんのいる玄関に向かった。
「あ、あの、おか…えり、なさい。」
「おっ、おう。ただいま。」
戸惑いながらも、にっこりと笑ってただいまと言ってくれたことが、今の僕にはすごく幸せに感んじられた。
「俺がお前を買うって話だけどな。
いいってよ。」
「ほぇ?」
ずっと待ち望んでいた言葉のはずなのに、どこか現実味を帯びていなくて間抜けな声をだしてしまった。
僕が黙っていたのが悪かったのか、お兄さんは横を向いて、「まあ、金もふんだくられたし。お前のこと、一生てばなしてやんねえから。」なんて言って、照れ隠しを言った。
僕は、その瞬間が幸せでたまらなかった。
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