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87 過去編
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「おいで」
俺は売られない。
それがあいつの意思だから。
あいつのいる、この建物の中に、この檻の中にさえいれば、あいつは俺のすることになんの文句も言わない。
だから、俺はいつもこの牢のなかにいる。
外になんて出ない。
だから、ここからでるのは一人しかいなかった。
俺はずっとここにいて、仕事から帰ってきたら両手を広げる。
そして、俺の腕のなかに入ってくる。
俺は、常に抱いていた。
そういう意味でも、そうでない意味でも。
こいつは、ここが自分の居場所だとでもいうかのように、常に俺の腕のなかにいた。
一人でうずくまることがなくなったからか、なかなくなった。
調子が良いようで、チップも多いし、ずっと一位を独占していた。
こいつは、笑うようになった。
でも、俺はもうすぐここを離れてしまうことを、ずっと黙っていた。
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