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目を覚ますと、真っ暗な部屋に居た。照明も点けられておらず、僕は不安になり少しだけ上半身を起こした。
「…起きたのか?」
低音で、でもどこか優しく感じるその声の方に顔を向ける。
「隆哉、ごめんね」
「謝らなくていい」
もう一度横になると、隆哉は腕を回し僕の体を抱く。そして子どもを寝かしつけるように僕の背中をリズム良く叩く。
お父さんみたい、小さく呟くと馬鹿かと言って頭を撫でられた。
「俺がいる…」
「…うん」
僕はその心地良いリズムと隆哉の温かさに安心してもう一度眠りに就いた。
次に目を覚ますと隣には隆哉はいなくて、カーテンの外から洩れる光で朝なのだと気付き慌ててベッドから降りる。
「おはよう、隆哉」
リビングを覗くと黒いソファーに座る隆哉の後ろ姿が見えた。
「ああ」
振り返らず返事をする隆哉の傍まで行くとコーヒーの良い香りが漂う。
「飲みたきゃ、自分で淹れろよ」
「…けち」
失恋したばかりの友人を労わってくれてもいいのに、と愚痴を零す僕を無視し隆哉は新聞を読んでいる。
「隆哉、ありがとう」
「…何が?」
僕は気付かれないように小さく笑うとコーヒーを淹れる為、キッチンへ向かった。
僕の大切な友人、ただ一人の大切な友人。傍にいるだけでこんなにも心地良い。昨日はあんなに悲しくて堪らなかったのに、それが少し和らいだように感じるのは隆哉のおかげだ。
「あ、朝食食べていないよね?何か作るよ」
「冷蔵庫、何もないぞ」
冷蔵庫を開けてみると言った通り何もない。
「近くのスーパーもう開いているよね?行って来る!」
態々いいと隆哉は言ったけれど、お礼だからと押し切り、若干迷惑そうな隆哉を今度は僕が無視して財布を持ち家を出た。
「彰人!」
マンションを出て直ぐ背後から誰かが近付く気配と、聞き覚えのある声がした。恐る恐る振り向くとそこに立っていたのはやっぱり昨日別れた恋人だった。
「…どうして、ここに居るの?」
その姿を見るとまた泣きたい気持ちになって、思わず顔を伏せる。
「家に帰っても居ないし、居るとしたら絶対に隆哉の家だと思った。それなのに、お前も隆哉も電話に出ないし…」
徐々に近付いて来ているのが分かるのに、逃げ出す事も出来ない。
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