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10話 強がり
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「咲良くん!ごめんね、待った?」
凜先輩の声にハッとし、俺はすぐさま笑顔を作る。
「いえ、大丈夫ですよ」
「そっか、良かった…」
走ってきたのか、若干息を切らしている。
本当に変なとこ真面目だよな…。
「じゃあ、行きましょうか」
「あ…ちょ、ちょっと待ってくれる?」
「?はい」
どうしたんだろう先輩…なんだか落ち着きないような…?
俺が疑問に思っていれば、すぐにその答えは見つかった。
「あ、安坂くん!ば、ばいばい」
「…さよなら」
「っ!うん!」
嬉しそうな先輩の顔、ああ…そうか。
安坂に"ばいばい"って言うために、先輩は…待ってたのか。
そわそわして、恋する女の子みたいに…
「…すみません凜先輩!俺、急用が出来たんで安坂に手伝って貰って下さい!」
「え、えぇ?!ちょ、ちょっと咲良くん!?」
「じゃ!頑張って下さいねー凜先輩!」
嘘をついた。
急用なんてない、手伝いなんて安坂と先輩が一緒に居れるようにってついた嘘…
俺は走りながら、ぐっと唇を噛んだ。
辛い、辛い、辛い、辛い、辛い…
望んだ恋だった。
先輩を好きで居ようって思ったのは自分の意思だった。
側に居られるだけでいい…先輩が幸せになれるならそれでいい…
そんなの、俺の強がりだった。
この痛みを和らげる薬みたいなもんだった。
ああ、痛いな。
恋ってこんなに、痛いんだな…
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