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初めての感情は
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バスルームで意識を失った咲耶の後処理を済ませると、有紀は咲耶をベットルームまで連れて行きそっと寝かせた。自身もベッドに入り、咲耶の長い睫の端に残る滴を指ですくうと、まだほんのりと桜色に染まった頬に指を滑らせる。風紀委員長として凛と振る舞う姿からは想像できない程、眠る咲耶は闇夜に浮かぶ月のように、どこか儚い美しさを放っていた。こんなにも綺麗な人を今しがた抱いていたのかと、有紀は信じがたい気持ちになった。
「なんでこんなに君に惹かれているんだろうね・・・。」
有紀はふっと笑みを零した。男女問わず誰かを抱くのは初めてではなかった。学園の王子、優等生、生徒会長、たくさんの仮面を持ち、本来の自分の感情を笑顔の下に押し殺して過ごすことで生まれた渇きを、誰かと身体を重ねることで紛らわせてきた。だが、こんなにも心が揺すぶられることはなかった。むしろ身体を重ねるごとに想いの伴わない行為に虚しさを感じつつあった。見知らぬ男達に蹂躙されただけでなく、迅にも悪戯されたのかと思うと抑えようのない嫉妬が燃え上がり、衝動のままに行為に至ってしまった。しかし、不思議と有紀の心はこれまでにないほど満たされていた。
「好き・・・になってるのか・・・。」
今まで抱いたことのない感情に有紀自身戸惑っていた。暇つぶしの遊び相手のつもりが、ここまでのめり込むとは思いもしなかった。小さく寝息を立てる咲耶に顔を近づけると、額に軽いキスを送った。今日咲耶はどんな理由であれ自分に抱かれた。そこに好意は甘い感情はないのかもしれない。ただ駄々をこねる有紀に呆れ、仕方なく身を任せたと考える方が納得がいく。
「それでも良いさ。他の誰かに取られるくらいなら。」
取られるくらいなら嫌われてでも自分の手元に繋ぎとめておく。もう二度と大切な存在を手放したりしないと、5年前あのアイスグレーの瞳の少年を失ってしまった時に決めたのだ。有紀は咲耶の細い身体を抱き寄せると、深い眠りに落ちて行った。
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