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夢にまで見た口づけに
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57話
「ねえ、髪乾かしてあげようか?」
それは有紀からの唐突すぎる提案だった。晩御飯のカレー作りをおえると、各々に自由時間が与えられ、咲耶と有紀は疲労した身体を癒すため、早々に部屋に戻り風呂を済ませることにした。一緒に入ると言って聞かない有紀を何とか言いくるめ1人でのんびりと湯船に浸かった咲耶が、ホクホクと頬を染め脱衣所を出ると、王子スマイルを浮かべた有紀が待ち構えており、冒頭の言葉を放ったのだ。突飛な発言にすっかり度肝を抜かれた咲耶は、髪を拭く手を止めまじまじと有紀を見つめた。両思いになった今でも咲耶にとって有紀は変わらず憧れの君だ。急に距離を詰められても、咲耶はまだ有紀との心の尺度を図りかねていた。
「それぐらい自分で出来る」
「いーから。俺に甘やかさせてよ」
蕩けるような声音で請われ、胸が大きく跳ねた。有紀は迷う咲耶の手を引いて洗面所に行くと、鼻歌混じりにドライヤーをかけ始めた。鏡越しに有紀と目が合い柔和な笑顔を向けられる。咲耶は胸に広がる幸福感を噛み締めるように少し俯いた。有紀からの好意を両手を広げて受け止めきれない自分の不器用さが歯痒かった。
「ゆっくりで良いから」
「え?」
「無理して俺に合わせる必要ないからね。咲耶は咲耶のペースでゆっくり俺と向き合ってくれたらそれで良いから。俺は咲耶が安心して素の自分を見せられるまで、いくらでも待つよ」
「有紀、俺は・・・」
咲耶はそれ以上どんな言葉を繋げば良いか分からなかった。何と言えばこの湧き上がる感情を伝えられるのだろうか。咲耶は吸い込まれるように鏡に手を伸ばし、そこに映る有紀の唇を指先でそっと撫でた。この人を好きになって良かったと心から思えた。
「・・・そんないじらしいことされると、堪らなくなるんだけど」
髪を乾かす手を止め、有紀は後ろからきつく咲耶を抱きしめた。肩口に有紀の顔が埋められ、優しいキスが落とされる。肌に触れる唇が少しずつ下りていくごとに、身体が熱を帯び始めた。床にしゃがみ込んだ有紀は咲耶の手を取り、恭しくキスをする。
「好きだよ、咲耶。愛してる」
耳に響く甘い言葉に酔ってしまいそうだった。咲耶は潤む瞳でしっとりと有紀を見つめ深く息を吐いた。自分も床に座り有紀の頬にもう片方の手を添える。
「俺も、愛している」
それが合図かの様に有紀は咲耶の身体を壁に押し付けると、貪るようにキスを交わした。つい先刻までの紳士さが夢かと思える程の激しい口づけに、咲耶はどうしようもなく高ぶった。舌の交わる淫靡な水音と荒い息遣いが追い打ちをかけるように咲耶の理性を奪っていく。
「は・・・、あ」
時折漏れる声はまるで自分のものとは思えない。痺れていく感覚を繋ぎ止め、咲耶は腕を有紀の首に回すと必死にしがみついた。薄いバスローブ越しに互いの体温が溶け合い、全身が暑くて仕方なかった。
「咲耶・・・ここ、もう硬くなってるよ」
中心を熟れたヘーゼルの瞳に見つめられ、咲耶は気恥ずかしさで足を閉じようとするが、有紀はそれを許さなかった。
「触って。俺のもこんなに熱くなってる」
有紀の手に促され有紀のモノに触れる。布越しでも分かるほど、有紀のそれは硬く熱を持っていた。有紀はバスローブの隙間から手を滑り込ませると下着をずらし直接咲耶の陰部を包んだ。
「あ・・・」
ほんの少しさすられただけで、敏感になったそこは強い刺激を脳に伝える。
「可愛いよ、咲耶」
与えられるだけの快感が寂しくて、咲耶は有紀の真似をして手を直に有紀の中心に添える。自分モノよりもやや大きな男根に嫉妬心を抱きつつも、優しく抜き始めた。
「きも・・ちい・・か?」
「・・・うん、凄い気持ちいよ・・、もっとして」
余裕の無い視線に貫かれ、咲耶の理性は完全に弾け飛んだ。悦楽に浮かされながらも夢中で有紀の熱を高めた。同時に自分のものも扱かれ、思考がドロドロに溶け落ちていく。不意に有紀が咲耶の腰を持ち上げ自分の上に座らせる。
「ほら、一緒に」
有紀は先走り液で濡れた互いのモノを擦り合わせ手を先程までよりも強く抜き始める。あまりの快感に目眩を覚え朦朧とした意識のまま、咲耶は何とかそれについて行こうとする。
「あっ・・あん・・はあっ!」
だんだんと悦が溜まり口から零れ出る喘ぎも大きく荒くなっていった。
「有紀・・・、だめ・・・もう」
咲耶のモノは限界に近かった。体内で燻った熱が全て中心に集まり、吐き出したくて仕方ない。しかし有紀はすんでの所で手を止めてしまった。
「な・・・」
「咲耶からキスして。そしたらイかせてあげる」
「そんな・・・条件、言わなくても・・・いくらでもする」
普段ならば絶対に言葉にしないであろう想いが、咲耶の口から自然と溢れ出ていた。そう、咲耶はずっとこうして有紀と愛を交わしたかった。有紀とする口づけを何度夢に見ただろう。恋しくて恋しくて。そんな相手が今こうして自分のすぐ目の前にいる。咲耶は持てるだけの愛情を全て注ぎ込み、有紀の瞼、鼻、頬、そして唇へとキスをした。
「ごめん、俺の方が我慢できないや・・・!」
暑い吐息で呟くと、有紀は勢いよく2人の陰茎を擦り合わせた。
「あっ・・・あ!」
待ち望んだ快楽に咲耶はまた翻弄される。薄く開けた瞳がどろどろの情欲に濡れた有紀の瞳とかち合う。
「有紀っ・・・有紀・・・!」
好き。好き。この幸せを逃すまいと咲耶は懸命に有紀にしがみつく。
「あっ・・・いく!」
「咲耶、俺もっ・・・!」
一気に熱が弾け、互いの身体に飛沫が飛んだ。肌に感じる温もりに咲耶は恍惚とした表情を浮かべた。
「・・・何て顔してるの」
有紀は困ったように笑い、咲耶の後ろ髪を愛しむように撫でた。その感触が心地よくて、咲耶はゆっくりと瞼を閉じる。まだぼんやりとした思考の中で確かに有紀の愛を感じた。咲耶は甘えるように、有紀の肩に頭を乗せた。
「本当、可愛すぎてどうしようね。これ以上俺を惚れさせてどうしようっていうのさ」
「・・・お互い様だ」
咲耶はくつくつと小さく笑った。有紀もつられて微笑む。この夢が永遠に覚めなければ良い。そんな願いを込め、咲耶はまたこの世で1番愛しい人と口づけを交わした。
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