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鳥さんの後を追いながらふと、考えた。
白蛇様は何に傷ついたのだろうと。そして、僕はまたこの世に帰って来たのだろかと。止まない思考は時に脳内をそれで一杯にし、不注意を呼ぶ。
「いたっ…!」
木とおでこがぶつかり、ゴンっと音と共に痛みが走る。目の前の木に当たるなんて不様でしかないが、思考とは恐ろしいと自分のせいにはせず脳を責めた。いや、これも自分の一部なのだから自分かと納得。
「大丈夫ですか?わー!おでこが…血が!」
「ぷぷっ!馬鹿だな。神の使いなのに…ぷっ」
それよりも君たちの性格の正反対さに驚いたよ。内心悪態を付きながらも額を押さえて傷を確かめる。
「あれ…?」
確かに血が手についてはいるのだか、ぶつかった時のような痛みは触っても感じられなかった。
治ってしまったと言うのが正しいのかもしれない。神の言うちょっぴり人より優れている言葉がよぎるが、ちょっぴり処じゃない気がした。
「神の使い様は不死身なんですよねー」
「痛みは感じるらしいぜ」
聞いてもいない解説のお陰で理解できたよ、ありがとう。どうやら自分はゾンビみたいになったらしい。転生じゃない、これは覚醒だと訳の分からない状況に、完をつけた。
「先を急ごう。なんだかだんだん理解してきた」
額の血を拭い、拭き取った。顎まで伸びるながい 黒髪が視界を遮る。邪魔だとばかりに耳にかけ視界をクリアにする。なにもかも億劫で延びっぱなしの髪は肩まである。まとめる事もできず風に靡く髪は生きてるように逆らわず流れていく。
「神の使い様はやっぱり美しいな…」
そんな言葉が聞こえた気がした。聞こえなかったように先を進む二羽の後を追いかけて森の深くへと歩いていく。
「あそこの縄が見えますか?あの先が結界の向こうにある泉だチュン!」
「これで俺たちの案内はおわりだ。せいぜい食べられないようにするんだな」
「助かったよ、ありがとう」
羽をバタつかせて指す方向を見る。光が見えた気がした。進んで手を触れてみた。一瞬ぐにゃっと視界が歪んだ気がしたが、手はすんなりとその先に伸びていく。うん、行けそうだ。
立ち去ろうとする二羽に振り返り、出会って数時間も経たない彼等に愛着が沸いたのかもしれない。
引き留めるように「待って!」と呼び止めた。
「…また会えるかな。」
少し俯き、おこがましいその贅沢な問い掛けに、頬を染める。いつぶりだろう、こんな気持ち。
「ここにいる限り必ず会えるチュン!僕はスズ」
「気ままに飛んでるから見掛けたら話し掛けてこいよ。もっとも見分けがついたらだがな。俺はレン!じゃあ、また」
「また!ありがとう!俺は…佐々木!」
手を振り見送る。友達と言うのは勿体無く贅沢な気がした。それでも、知り合いが出来た事に心が踊る。なにもかもが新鮮で真新しい世界に感じた。
(そっか、僕は今いきているんだ)
それと同時に思い出せない名前。鳥さんに教えて貰った名前の後、自分も名前を言おうとしたのだ。名字ではなく、下の名前を。
思い出せないのは落下した衝撃によるものなのだろうか。余り深く考えても仕方ないと忘れるように首を振る。今はこの結界の先で待っている人に会わなければいけないのだから。
「お邪魔します…」
家でも無いのに、挨拶をする。白蛇様のテリトリーで有る限り間違ってはいないだろう。
身体全部を縄を跨ぎ入り込む。いつ殺されても可笑しくないのかもしれない。いや、不死身だった。
「澄んだ空気だ。これが白蛇様の世界」
知った口を叩いているが、此処が神聖な場所だと言うことに間違いはないだろう。何となくわかる雰囲気に緊張を覚える。
ダメだと分かりながらもお菓子に手を伸ばしてしまう子供みたいに、警戒している自分の意志を無視して足を進める。
数十分も歩けば目的の場所へと到達した。
木々に囲まれた泉は木漏れ日により光でキラキラと輝き、透き通る水は底まで映す。余りの美しさに酔いしれそうになって少しふらつく。
その瞬間、身体に衝撃を感じた。一瞬で何が起こったかも分からず浮遊する身体と締まる首に息も飲めない。
「ふっ…ぐっ」
徐々に締まっていく首に話すことも出来ずに足をバタつかせて足掻くしか無かった。
「人の子か。何しに来たのは知らないけど、知る必要もない。」
容赦なく、力一杯に握り締められる。呼吸が出来なくても生きれるのかと、不死身だと告げた鳥達の言葉を疑心暗鬼になりながらも、握り締めるその手を放そうと、掴みにかかる。
仮に死んだとしてもまた、神様に転生されるだろう。ゲームのように。だが、苦しみを我慢できるほど忍耐強くもない、そう自分は人の子なのだ。
「なかなか強情…生きることに必死で貪欲な種族らしい。虫酸が走る…っ!」
何をしたわけでもなくふらつ相手。握りしめていた手が揺るむ。咄嗟に最後の力を振り絞ってその手を放す。地面へと叩き付けられ、立ち上がる事も出来ずに、足りない酸素を身体に補給しようと息が上がる。
「はぁ、はぁ…っ」
突然、ふらついた相手を見上げて、息を呑んだ。
真っ白で赤い…長い髪を後ろに束ね端正な顔立ち。ルビーのように赤いその目は、間違いなく白蛇様だろうと、限界を迎えた身体が悲鳴をあげて視界が暗くブラックアウトした。
最後に見た彼の目は見開いていて、それでいて冷たい眼差しだった。それはまるで氷のように。
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