アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
5
-
「神の使いは我々にとって極上の贄だよ。禁断の果実など比べ物にならないくらいね。お前は知らなかったみたいだが」
呆然とする僕に白蛇様はそう告げた。僕が餌さと言うことだろうか…さっきのキスも。
先程の行為を思い出し顔が熱くなる。初めてのそれは自分には刺激が大きかったようだ。
「…あんなの、初めてです」
「私を救いたいのだろう。あれごときで動揺してるようでは先が思いやられる」
「な、ななっ!」
先って何ですか!?それを聞きたいが、聞きたくない。立ち上がり小馬鹿にしたように嘲笑う白蛇様に言い返したくても、返せない。
「初々しいのは良いが…まだまだ子供だな」
「よ、余計なお世話ですっ!」
大打撃を受けて立ち上がり、慌ててその場を後にする。道が暗いとか、泥だらけとかそんなことは後回しで走る。図星を突かれそれが逆ギレとか、そんなことは関係ないと言わんばかりに、言葉を吐き捨てた。
後方で「やれやれ」と呆れたように悪態をつく彼。悪いのは僕なのか?と、疑問に感じながら。
入り口に着くなり服を脱ぎ捨て、泥まみれになった身体を綺麗にする。まだ外は暗い。
あれからそんなに時間は経っていないらしく、泉に浸かり泥を洗いながす。
「私を救いたいんだろう」
あの言葉は、僕が彼の側に居てもいい肯定と判断しても良いのだろうか。
キスをすることで生き長らえる事になるのならば、白蛇様の寿命は伸びた事にならないだろうか。いずれ死ぬと言うその言葉を、僕は覆したい。
もしそうなら、何度だって歯向かえる気がした。
血が流れるほど深い傷を付けられた頬をさすり、胸を眺める。今はもう傷痕すら残らない身体…そして最後に重なりあった唇をなぞる。
「…あつい」
頬も胸も頭も何もかもが熱かった。
冷たくて丁度いい泉の水がそれを冷まして呉れるようで、月夜を眺めながらほっと一息付いた。
そうして後で気づくのだ。
洞窟に帰れば、また彼が寝ていることに。
僕は躊躇なく彼の隣で、安心したかのように頬を緩ませて隣に居座る。
熱い想いを胸に秘めて、目を閉じた。
二話「光」完
おまけ。
「光」視点、白蛇
立ち去っていく人の子を目で追い、引き止める事なく走らせる。
余裕綽々のように見せておきながら、何一つの余裕も無かったのだ。
(何故あのような事を…)
歯止めが効かなかった。弱いくせして一生懸命なあの子表情が頭から離れない。
忘れる筈もない人の起こす争い…今はもう落ち着いた現代では考えもつかない、飢えから為される何かを犠牲してまで生き長らえようとする醜い欲。
神の使いとて魂は人の子。醜い魂。
それなのになんの欲も感じ取れない純粋な想いは、誰が見ても理解できるだろう。時折、己すら犠牲にできる強い意志。
「くくっ、慈愛の神も憎い事をしてくれる」
あんな極上の代物を送り、私を酔いしらすつもりなのか。なんの穢れも知らない純粋な魂は側にいるだけでも生気を与えるだろう。
惹かれてはいけない、それでも麻薬のように引き寄せられる美しい子。
「もう少し…生きてみようか」
揺らぐ気持ちと戦いながら、癒しを求めてその場を後にする。
彼がいるであろう、人間臭いあの場所に。
完
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
11 / 17