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始まりの話
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今日は定時で仕事を上がれた。だから、どうしても買いたい物があって急いでいる。バスから降りて、定期券をショルダーバックへ入れながら歩く。
ドン、
人の気配。余所見してた俺は、誰かにぶつかった。衝撃に耐えられず、ヨロヨロとよろける。
2、3歩ふらふらした俺は半袖のTシャツから出てる腕を、大きな手でガッシリと掴まれた。結構強い力。今度は掴まれた方へちょっとよろけた。
「…大丈夫か、」
低い声。スポーツメーカーのロゴ入りの黒いキャップ。その隙間から見える、細く鋭い目。
はう!こ、怖い…。
「…ケガは、」
け、けが…?あ、あ!ぶつかったのは、この人かな?こ、怖いけど、謝らないと。
「す、すみませんでした。」
「……。」
あわわわわ…。この威圧感は何?怒ってる?お金巻き上げられる?で、でもそんなにお金持ってない。あ、それに、200円位は残しておいてほしい。そしたら、買えるから。
あ!早く行かないと、売り切れちゃうよ。よし!勇気を出して言うんだ。
「あ、あの、今、急いでいて、」
「…名前は、」
うひい!名前聞かれた。で、でもぶつかったのは俺だ。もしかしたら、この人はどこか痛いのかもしれない。社会人としてちゃんと対応しないと。
「志賀 和です。」
「なごみ…どう書く、」
「え、えっと。和菓子の和で、なごみ。」
いつも言い慣れた説明をする。大抵の人は、どう書くのか聞いてくる。
「西 蒼。」
「え?にしあおい?」
「俺の名前、」
「あ、はい。」
なんだか、自己紹介し合ってるけど…あ!時間が。
「あの、本当に急いでいるんです。話はちゃんと聞きますし、今後の対応とかの事もあるので連絡先を教えて下さい。」
細く鋭い目が、一瞬見開かれた。
「ケータイの番号でいいか、」
「あ、はい。じゃあ俺の番号も。」
番号交換をして、本当にぶつかってすみませんでしたと頭を下げてから、俺たちは別れた。
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