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第79話
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蒼さんの長い指が器用に動いて、茶色にピンクの細かいドット柄のハートの形をしたピンで俺の前髪をパチリと留める。
「ありがとう。蒼さんの前髪も伸びたね。あ、そうだ。もう一個ピンあるよ。」
「んー…じゃあ和がやって。」
手を伸ばして彼の前髪に触れると、腰を屈めてくれた。手に持ってた同じハートのピンで彼の前髪を横に流して、パチリと留める。ちょっと、下手な留め方になってしまったけど…これでも前よりは上達したんだよ。
「へへ、お揃い。蒼さん可愛い。」
「ピンとか、初めてなんだけど。似合ってない自信は有る。」
「えー、そんな事ないよ。本当に可愛いよ。」
「はは、んな事言うのは和だけ。」
ちゅ、
俺の剥き出しになった、おでこにキス。本当なのになぁ。可愛いよ。
「よし、やるか。」
「うん。失敗したらゴメンね。」
仕事が終わって、約束通りにカップケーキを作る為に彼の家の台所に立ってる。並べた材料を、レシピを見ながらボールに入れる。
ホットケーキミックスに卵や牛乳を混ぜて、本当は更に砂糖を加える様に書いてあるけど、蒼さんは甘くない方がいいから、そのままピザ用のチーズを入れてかき混ぜる。
ボールを抑えて、泡立器でグルグル。エプロンなんて持ってないから、二人とも洋服のままで作業してる。
「このくらいでいいのかな。」
「うん、ダマにもなってないし良いんじゃないか。」
隣で作業してる蒼さんのボールを覗く、ココアの入った生地は薄いチョコレート色。匂いもココアの香りで美味しそう。
「じゃあ、カップに入れよう。何だかこれで大丈夫なのか不安なくらい、簡単だよね。」
「うん、確かに。ホットケーキミックスのおかげだろうな。」
余熱で170度まで上げておいたオーブンに、蒼さんの作った生地入りカップと、俺の作った生地入りカップを並べて焼く。
「さて、待ち時間に夕食の準備をするか。と言っても、家政婦さんの料理並べるだけだけど、」
「何だか、ごめん。また俺の分まで作って貰ちゃって、家政婦さん大変だったよね。こんな豪華な食事用意して貰って、」
「いや、一人分も二人分も大して変わらないって笑ってたぞ。それに、料理は楽しいし喜んでほしいって。」
冷蔵庫からサラダを取り出して、チキンのグリルの横に並べる。鍋に入ってるシチューを温め直して、深めの皿に注いで運ぶ。フランスパンのサンドイッチもある。本当に豪華で贅沢。
「蒼さん、食事中は烏龍茶がいいかな。」
「あー、コーラもあるけど…て言うか、シャンパンとか飲みたかった?」
「ううん。お酒は、蒼さんが未成年のうちは駄目だよ。烏龍茶とコーラ両方出しとくね。」
「うん。まあ、和はそう言うかなとは思った。御免な、飲みたいなら遠慮せずに今からでも買いに行こうか。俺は飲まねえから。」
気を使って貰ってるなぁ。でも、本当にそんなにアルコール大好きって訳じゃないんだよ。それに、
「あのね、蒼さんが20歳になったらお祝いして、その時にお酒を一緒に飲みたいなあって思うんだ。だから、今はいらないよ。」
彼の目が細くなる、唇が笑みの形になった。
「そっか。…うん、それは嬉しいかも。なら、俺もその時まで、アルコールはもう飲まない様にしとく。」
もう飲まない、ってことろは気になったけど、…何だかお酒強そう。
「うふふ、約束ね。」
「うん。」
コップを手に持ったまま瞳を閉じると、近付いた彼の唇が優しく触れる。つやつやの柔らかな唇、ほんの少しストロベリーの香り。
「甘い匂い。」
「和も。」
大好き。20歳の彼はもっと、身長が高くて男らしいのかな。その時の俺は26歳…うわ、想像出来ない。
「蒼さん、どうしよう。俺は26歳だよ!?」
「何が、」
「蒼さんが20歳になった時だよ。うわ、もう全然想像出来ない。男らしい感じでヒゲとか生えてるかな…ちょっと太ったりとか…。」
嫌われたらどうしよう。ちょっと、狼狽えてしまう。
「いや、それはないだろ。今とあんま変わんないと思うけど。」
「え、どうして?」
「既に成長期は終わってるし、少食だし、今の外見からして中学生か高1。時々、東洋の神秘を具現化してる存在に驚く。」
「え、え?東洋の神秘、具現化?」
中学生のくだりも、かなりショック!でも、初めて会った時もそんな事言ってた、同い年とか…。
「まあ、心配するなって話。」
「うん…。」
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