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放っておいてよ親友
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「お前今誰と一緒に居るかわかってんのかよ!!」
流石に迷惑になる、と場所を移した先の人目につかない裏路地で
真咲に向かってそんな怒号が響いた。
燕が羽島の肩を掴んで抑えているものの、羽島は今にも鷹也に飛びかかりそうな勢いで。
「わかってるよ、でも鷹也ちゃんと謝ってくれたし……」
「謝ったからって許せる事なのかよあれは!!」
「あんまりうるさくすると人集まってくるぞ鶴人」
「てめえどの口がそんな事……っ!!」
そんな羽島を挑発するように鷹也は笑うのだから、
本当にこの二人は相性が悪いと真咲は困ったように眉を下げた。
するとそんな真咲を見て、大丈夫だと言うように鷹也がぽんぽんと優しく頭を撫でる。
「お前がちゃんと見てねえから今真咲がこうなってんじゃねえか鶴人」
「それは…っ…」
「恋人できたんだって?
それで真咲の事ほったらかしてたわけか」
「違う!!」
羽島が否定するも、鷹也はじ、と真顔で羽島を見る。
それに羽島も視線を返して、喧嘩が始まりそうな雰囲気に真咲がおろおろとしてしまう。
「今真咲を心配するより先に怒鳴り付けてるお前も
その元カノと浮気した恋人とやらも同じだよ。
これからこいつを傷つける奴は俺が許さねえ」
「そんなの…っ…お前が言えたことかよ!!」
「ああ、だからあの時の事も含めて償うって言ってんだ、
本人は許してるわけだしお前にとやかく言われる筋合いねえよ」
「真咲っ、こいつなんか許さなくていい、
お前そういう所よくないって、
世の中には許していい事とダメな事が……」
それを聞いた真咲は、ふい、と羽島から顔を逸らした。
聞きたくないと言うように俯いて、
ぽつぽつと小さな声で話す。
「俺ほんとに、鷹也の事怒ってないし。
鷹也が俺の事嫌ってないならいいんだ、
もう一回、鷹也と仲良くできるならそれで、」
言い終わる前に、真咲の肩が乱暴に掴まれた。
羽島はかなり怒った顔で真咲を見て、
怒りに染まった心情に任せて、
それをそのままに言葉にしてしまった。
「お前がそんな甘いから中学時代にあんな事になったんだろうが、
前も今でも、俺がどんだけお前の事で気遣って気ぃ揉んでると思ってんだよ、何あっさりそいつ許してんの?
ていうかさあ、真咲がそんなだから大神も元カノがいいって選んだんじゃねえの!?」
その言葉に真咲の目が見開かれて、
そして諦めたように一度伏せられて
ぱしん、と羽島の手を払って踵を返した。
「じゃあもう俺の事気にしないでいいよ、
ずっと迷惑だったんだ、ごめんな気づかなくて。
でもそれならさ、俺の事放って羽島の好きにしたらいいだろ、俺別に止めないし」
「あ、違、真咲っ……」
「鷹也、荷物取りに行くから、もう帰ろ」
「…………ああ」
ぐい、と力なく腕を引く真咲の手を鷹也は強く握り返して、
痛くない程度に、だが力強く腕を引いて足早に進む。
そして自分のマンションへとたどり着くと、
玄関に入るなり真咲を抱き締めた。
「鷹也、俺の事放っておいていいよ、
羽島にあんなに言われていい気分でもないだろ」
「……そんな酷え顔してるお前ほっとけるかよ」
「……やめろよ、俺恋人いるのに」
「俺にしろって言ってんだろ」
恋人がいる、と口では言っておきながら
抱き締められる腕にすがる自分がいる事に真咲は気づいていた。
ぎこちなく頭を撫でてくれる不器用な腕を、
どうしても振りほどけなくて甘えてしまいたくて。
ぎゅう、と、目の前を滲ませながら大神とも羽島とも違う細い体に腕をまわしてしまったのが
無意識なのか自分の意思なのか、真咲にはわからなかった、
けれど、わからなくていいとも思った。
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