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夏ですね後輩くん
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夏休みに入って数日後、真咲達は神楽の知り合いのやっている海の家へと早速バイトに来ていた。
採用はするけどとりあえず軽い面接から、と爽やかに笑うのは
ミルクティー色の髪にヘアバンドが特徴的な
背の高い優しそうな青年だ。
「初めまして。あ、僕はここを経営してる高槻凌、よろしくね」
「久瀬真咲です、よろしくお願いします。
あの、俺バイトの経験とかないんですけど大丈夫ですか?」
「おっ、初バイト?
よしよし、じゃあ丁寧に教えなきゃね。
うん、顔もいいし客引きになりそう、
それにチャラついてないし真面目そうだから全然合格、来てくれてありがとうね~」
「あ、いえ、こちらこそありがとうございます。
よろしくお願いします」
面接、と言っても奥のテーブル席で高槻と簡単に話をしただけだった。
ゆるい笑みを浮かべて全員に合格、と言った高槻は
厨房やレジ、接客の説明を簡単に話して
そして日程の説明に移った。
「うちは朝の8時から夕方の5時までの営業でね、
僕は毎日居るけど最低3人居てくれたら話し合って好きな日に来てくれていいよ。
それか毎日朝からと昼からのシフトで分けるかね」
「俺は誘った本人だし去年も手伝ってっから
凌と同じ時間入るわ、あとお前ら四人でシフト分けすればいいんじゃねえか」
「わー聖力持ちだし助かるわ~、
あ、じゃあね、顔で久瀬くんと大神くんに客引きしてもらうから二人はシフト別れてほしいな」
「え、あ、はい。わかりました」
へら、と笑った高槻の言葉に若干大神が残念そうにしたが
流石に遊びではなくしかも店長の言葉だと頷く。
じゃあ泳ぎ方教える約束だし、と鷹也が真咲側に入ってすんなり組が決まった。
「料理は僕が作って、聖は浮き輪とボードの貸し出しと食材補充の力仕事ね。
お客さん少ない時の客引きと、ホールとレジは残り二人でよろしく」
「わかりました」
「僕の事は気軽に凌さんって呼んで。
何かトラブルがあったらとりあえず僕か聖呼んでくれたらいいから。
じゃあ明日の海開きからの1週間だけよろしくね~」
ふにゃりと笑う高槻に釣られて真咲達もへらりと笑う。
せっかくなのでこの1週間は、偶然にも羽島の叔父がやっている
この近くの民宿に泊まろうと言っていたので、軽く海岸を歩いて真咲達は部屋に戻った。
「でも1週間だけで大丈夫なんすか?
バイト応募なかったんですよね、
それに夏休みは長いしもっと店開いてるでしょ?」
「ん?ああ、あいつの店は1週間しか開かねえよ。
あいつの死んだじいさんがやってた店でな、
ガキの頃から夏休みはそこで過ごしてたし
常連客のためにも潰すのは忍びねえって事で毎年1週間だけやってんだ」
「へえ……確かにちょっと離れたとこにでかいとこありましたもんね」
「あそこは品数多いしバイト応募も来るんだが
何せ店長含めかなり態度が悪くてなあ。
つーか凌んとこも応募なかったわけじゃねえんだよ、ただな、
下心満載のチャラついた奴等を落としたらこうなっただけで」
ああなるほど、と面接で言われた言葉に妙に納得がいった。
モテよう、ナンパしようという下心しかない男なら大量に来たんだろうなあと
そう思って、さらにそれが向こうの店のバイトに
流れたんだろうと思うとなんとも言えない気持ちになった。
「よく鷹也さん落ちませんでしたね」
「俺がチャラ男だとでも言いてえのかお前は」
「実際そうじゃん、そのピアス量だの長い金髪だの目付きだの」
「おいこら目付きってなんだ鶴人、
つーかお前もじゅうぶんチャラいわ」
その一言に全員が確かに、と頷いて笑って、
明日からの事を話して盛り上がっていると
こんこん、と控えめなノックが聞こえて会話が止まった。
真咲が返事をしてドアを開けると、やあ、と
優しく笑う高槻がそこに居た。
「凌さん、どうしました?」
「いやあ、ここに泊まるって聞いたからさ。
これは明日から手伝ってくれるお礼、
あ、お給料はちゃんと別に払うから安心して」
「あ、ありがとうございます…!!」
「ふふ、真咲くんきらきらしちゃって~。
甘いの好きかい?喜んでもらえたならよかった」
大量のアイスが入った袋に真咲が顔を輝かせると
くすくす笑って高槻に頭を撫でられた。
そしてそれだけ渡すと、店の準備があるからと
帰っていこうとした高槻の腕を思わず真咲は掴む。
「うん?どうしたんだい真咲くん、
もうアイスはないぞ~」
「あ、いえその、俺に何か手伝える事あったら……!
凌さん一人でやるの大変だろうし……」
「いや悪いよ、大丈夫大丈夫、こう見えても凌お兄さん慣れてるから~」
「俺らどうせ暇してるからいいって凌、
つーか準備とかまだあるなら先に言えよ」
「え~、なんか悪いなあ皆……ありがとね~」
そうしてまた海岸の方へと行って、
全員で開店準備を手伝う事になった。
凌は何をどうするだとか教えかたが優しかったし
何よりいつものメンバーでやる事だったから
真咲達は終始楽しんで準備を終えた。
この時はまだ誰も、明日から怒濤の1週間になるだなんて思いもしていなかった。
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