アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
ごめんなさいお兄さん
-
「鷹也次どこ行く~?」
「帰る」
「え、鷹也の家?
やぁだもう、大胆なんだから鷹也ぁ~」
「シバくぞ」
ふにゃふにゃへらへらと笑って鷹也の手を引く高槻に、鷹也は疲れた様子で返した。
外だからとゆるい雰囲気で話す高槻は
アパートで食事を終えた後にいきなり鷹也に出掛けるぞと言ってあちこちつれ回していた。
勿論早々に帰るつもりだった鷹也は断ったが強引に連れられ今に至る。
「鷹也こっちこっち、ここのクレープ美味しいんだよ~」
「あーもう、あんた落ち着きなさすぎなんだよ」
「ふふ、ごめんねえ。
だって鷹也と出掛けられるのが嬉しくって」
「…………あっそ」
普段のへらへらした笑い方とは違う、
頬を染めて本当に幸せそうに笑う高槻に、鷹也は調子が狂いっぱなしだ。
素はあっちの粗雑で子供っぽい方なのに
そんな顔で笑われるとわからなくなる、いや、
そもそも高槻の素がどちらかなんて自分には関係ないというのに、と
先程からぐるぐると自問自答して完全に高槻の事で頭がいっぱいになっていた。
「鷹也はさ、まだ真咲くん?」
「数日で吹っ切れるなら10年以上も片想いしてねえよ」
「……じゅ、10年って……マジか……」
「高槻さん……?」
高槻の勧めるままクレープを食べていた時に投げ掛けられた質問に鷹也が答えれば、
高槻の表情がひきつった。
そして寂しそうな顔で鷹也を見る。
「……またフラれるの、やだな……」
「…………場所、移すか」
泣きそうな顔になった高槻に、
鷹也はため息をついて立ち上がる。
そして軽く腕を引いてやると、高槻は先程とうって変わって大人しくついてくる。
自分のマンションに着くと、部屋まで通してやって
コーヒーをいれてやりながら鷹也は話を切り出した。
「あんたもしかして、マジで俺の事好きになったの?」
「……でも10年も片想いしてるんじゃ入る隙ないし、また叶わないかなって」
「……俺の片想いも報われねえけどな」
「じゃあ付き合ってよ」
じ、と真顔で見られて鷹也も真顔で見つめ返す。
どこかすがるような目線に、鷹也は複雑そうにして
それから緩く首を振った。
「多分、このまま付き合ったらあんたが辛いだけだから。
俺は、半端に喜ばせたくないくらいには
あんたの事好きだから、付き合えない」
「…………何それ……
聖にフラれた時よりめちゃくちゃ辛いんだけど」
「ごめんな、酷い事言ってるよな」
「……でも、優しい事言ってる、から、
また、どうしようもなく鷹也を好きになったよ」
素に戻って、くしゃりと笑っている高槻の唇は
少しだけ何かを我慢するように震えていた。
それを見て、たまらず鷹也は高槻を抱き寄せてしまう。
「……都合いいし、勝手な事なのはわかってる、
俺だって先日言われたばっかで、
どれだけ辛くなるかもわかってる。
でも、俺は……真咲より、あんたを好きにはなれないから……」
「……じゃあさ、好きじゃなくていい、
真咲くんにされてるって思っていいから
……鷹也の事抱かせてよ」
「……俺は、それがどれだけ虚しい事かも知ってる。あんたにそんな想いしてほしくない」
「……どうすればいい?
どうしたら鷹也は俺を好きになる?
俺もう、鷹也しか嫌だ」
まるで数日前自分が真咲に言い放った台詞だと、
そう思って鷹也は辛そうな顔をして高槻を見る。
自分がいちばん知っている、その気持ちの辛さを。
だがどうやってこの辛さを取り除いてやればいいんだと、
それがわからずにただ高槻を見ることしかできない。
「じゃあ……鷹也はさ、今以上に、
いつかは真咲くんより俺を好きになる可能性はあるのか?
それとも、それは絶対ない?」
「…………、……多分、だけど……
可能性はゼロ、じゃないとは、思うよ」
「……ごめんな、お前もつらいよな、
でも俺どうしようもなく鷹也が好きだ、
だから……可能性があるなら、諦めないから」
「…………わかった……」
ぱたぱたと泣きながら笑う高槻に、
鷹也も泣きそうになりながら涙を拭ってやる。
どうして自分なのか、どうして、
自分が好きになったのは高槻じゃないのかと、
そんな事を思って痛む胸に気づかないふりで
せめてもと、そっと高槻を抱き締めて慰めるように頭を撫でた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
86 / 426