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校門をくぐると、そこには掲示板に群がる人々。
新入生が自分の組を確認している。
優一郎はごちゃごちゃしているひとの間を縫って前に出る。
自分の苗字は百夜。
名前順だと下の方なのでそちらを見る。
すると、意外にすぐ見つかった。
1年B組と書かれた紙の下の方に名前がある。
確認できたので、またひとの間を縫って抜け出すと校舎に向かう。
やたらとでかい校舎は歴史があるとは思えないほど綺麗だ。
正確な年数は覚えてはいないものの、かなり歴史ある学校なのだ。
なのに校舎はまるで新設校のように綺麗。
新校舎に最近したのかもしれない。
そう自分に言い聞かせて校舎内へ入る。
下駄箱の場所はもう決まっているようで、百夜優一郎と書かれた下駄箱を見つけた。
そこに靴を入れ、持っていた袋から上履きを出して履く。
下駄箱を抜けようとすると、前にあたふたと焦った様子の学生がいた。
「はわわ……。あう……」
緊張しすぎて体がうまく動かないのか、下駄箱に入れようとした靴を落としてしまう。
やってしまったとばかりにため息をついて、今度はちゃんと靴を下駄箱に入れた。
そして上履きを履く直前に、優一郎の存在に気づいた。
すると、なにを思ったか上履きを履くのをやめて頭を下げた。
「あ、あわわ、ご、ごめんねぇ……? 邪魔だよね……」
どうやら優一郎が自分が邪魔で通れずにいたと思ったようだ。
「別にいい。それより早く上履き履けよ」
それに、嬉しそうに顔を輝かせると、男子生徒は上履きを履いた。
「ありがとう」
「なんでお礼なんか……」
「あ、そうだね」
へらへらと笑う男子生徒。
彼はなぜか優一郎についてくる。
「僕は早乙女与一。君は?」
「…………百夜、優一郎」
答えることに一瞬躊躇したが、優一郎はそう答えた。
するとまた、男子生徒――早乙女与一は顔を輝かせた。
「百夜くんかー。じゃ、同じクラスだね」
「は?」
「B組でしょ?」
「なんでわかる」
「さっき掲示板に載ってた組み分け見たとき、珍しい苗字だなぁと思ってたんだ」
「………………そっか」
確かに、百夜という苗字は珍しいだろう。
なにせこれは親の苗字ではないのだ。
「『百夜』ってのは俺がいた孤児院からもらった」
「孤児院?」
「俺は親に捨てられたんだよ」
その優一郎の言葉に、与一はすまなそうな顔をした。
「だから、俺はひとを信じない。友達も作る気ねぇから、話しかけんな」
そう言い切ると、俺は足早にB組と書かれた教室に入った。
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