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黄金の王妃・3
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西のお城まで、馬車で1週間くらいかかった。
といっても、貴族の領地を通る度に招かれて、寄り道も随分したし。それぞれのお屋敷に泊まっては、宴会にも出た。だから、寄り道が無ければ、もうちょっと早く着くのかも知れない。
王様に対してのお世辞だと思うんだけど、「美しい王妃様ですね」って、行く先々で何度も言われた。
そのたびに王様はオレを抱き寄せて、たまにヒザの上に乗せたりもして、「自慢の妃だ」って笑ってたけど、すっごく居心地悪かった。
自分が美しくないのは、分かってる。でも、美しくもないオレを「美しい」って呼ばせてるのは、「王妃」っていう身分の力で、それも何か、モヤモヤした。
そういう1週間だったから、西のお城に到着した時は、本当にホッとした。
宮殿に比べるとキラキラは少ないし、天井に絵が描かれてたり、柱に彫刻が施されたりはしてないけど、オレには十分豪華に思える。
王様がオレに「見せたい」って言ってた湖も、すごく大きくて、すごくキレイだった。
赤や黄色に色付き始めた森に、ぐるっと囲まれてて。湖面に青空とその木々とが映ってて、本当にすごくいい眺め。
水平線が見えるくらいに向こう岸は遠くて、この湖と森とが、国境も兼ねてるんだって。
城の最上階のバルコニーから、王様と2人で湖に沈んでく夕陽を見た。
「見事だろう?」
王様が、自慢げに言った。
「だが、夕陽の中で黄金に輝くお前の方が、オレにとっては目の保養だ」
優しく髪を撫でられ、抱き寄せられる。王様の強い腕の中で目を閉じて、重ねられる唇を受け入れる。
大事にして貰えて、とても嬉しい。
口接けの後で見上げると、王様が穏やかにオレを見下ろしてる。その素晴らしく整った顔も、真っ黒な髪と瞳も、夕陽に照らされて輝いてた。
「今日は、謁見も宴会も無しだ」
王様が、オレを抱き上げて優しく笑った。
「新婚旅行らしく、水入らずで過ごそう」
そう言われると、オレも嬉しくて、くすっと笑った。
だって、久し振りの2人きりの夜だ。
王妃として……謁見や宴会に顔を出すのは、大事なお仕事だって分かってる。
でもやっぱり緊張するし、失敗しないかハラハラするし。踊りだって踊れないのに、人前に出るのは好きじゃなかった。
バルコニーからそのまま、部屋を抜けて奥の寝室へと運ばれる。
ベッドは宮殿のよりも一回り小さいのが2つ。けれど王様は、別々に寝る気はないみたい。
「これから毎日、片方ずつ使うことにするか?」
くくっと笑いながらそう言って、オレを窓際のベッドに落とした。
服をはぎ取られ、夕陽の中に裸を晒す。同じく王様の完璧な裸も、夕陽に美しく照らされる。
月明かりの下でも、太陽の下でも……黄金の夕陽の下でも、どこにいても王様は、素晴らしくて完璧で美しい。
「きれいだ、アイタージュ」
蕩けるような笑みを浮かべて、王様がオレに囁いた。
少しずつ艶の出て来た髪を、整った長い指が優しくそっと掻き上げる。
明るい部屋の中、体の奥を拓かれていくのは、やっぱりすごく恥ずかしい。けど、この完璧で男らしく、愛おしい王様に求められるのは、それ以上に嬉しくて幸せだった。
「セレム様……」
オレだけに許された名前をそっと呟くと、笑みを浮かべたままの唇が、上から唇に重なった。
甘くて厚くて長い舌が、唇の隙間に割って入り、オレの中をかき混ぜる。
「食事ができる程度には、手加減をしてやろう」
王様は余裕の顔でそう言って、オレのヒザを押し開いた。
その夜は、久し振りに王様と2人だけで食事をした。
王様の言葉通り、少しは手加減してくれたみたい。朝まで気絶することもなく、食事時にはベッドから起き上がることができた。
けれど、それだけだ。
気だるくて、1人で歩くこともできなくて、王様に抱かれて移動してばかりになってしまった。
「ひどい、です」
そっと文句を言ってはみたけど、「手加減しただろう」って笑われるだけだ。
「責任を取って、食べさせてやろう」
くっくっと楽しそうにノドを鳴らしながら、王様はオレをヒザの上に乗せて、ひな鳥のように食べさせてくれた。
ほんの少し前、オレの全身に這わされ、オレを喘がせてくれた長い指が、ベッドではない場所でオレの唇に触れる。
口元に着いたソースを、長い舌がべろりと舐め、ついでに首筋も舐めていく。
このあたりでとれるっていう果実酒を、口移しに飲まされる。
こんなことができるのも、2人だけの食事だからだ。
ヒザに乗せられて、好き放題されるのはともかく……こうして2人で食事をしてると、王様はずっとオレの方を見て、オレだけに話しかけてくれる。オレも誰かから話しかけられることもなくて、王様だけを見つめていられる。
歩けなくされたのは困るし、食事も普通に食べたいけれど、やっぱり2人はいいなぁと、しみじみ思った。
後宮では当たり前のことだったけど、この1週間はずっと貴族や領主方との宴会だったから、余計にありがたみが身に沁みた。
2人きりって言っても、勿論、お世話してくれる侍女はいるけど、それは当たり前だし。オレはひそかにキクエさんたちのこと、家族みたいだと思ってる。
もしお母さんがいるなら、こんな感じかなあって。
実際に、息子さんがいる侍女もいるんだ。キクエさんと、ケディさん。2人の息子さんは2人とも近衛兵だから、さすがに後宮までは来ないけど、宮殿で姿を見かけることもある。
休憩中には、親子の会話を聞いたりもできる。
息子さんたちは、「いいから仕事しろよ」ってお母さんたちに文句を言ったりもしてるけど、そういうのを聞くのも楽しい。
オレは親の顔を知らないから――いいなあって本当に思うんだ。
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