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新場 陸斗side
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「遅くなりました、ボス」
片膝を地面につけ、額の前で右手の拳と左手のひらを力強く合わせる
この組織に伝わる、忠誠を誓う姿勢だ
「仕事前に呼び出して悪いな、陸」
「いえ、ちょうど寄るところだったので」
ボスは走らせていた筆を止め、着物の袖を正した
「いい報告だ、頼む、成(ナリ)」
「はい、ボス」
ボスの隣に立っている、同じく和服を着た青年が資料を取り出す
「報告させて頂きます。陸さんに頼まれていた件ですが、犯人らしき者の特定ができました。浩さんの恋人、追切壱くんの自宅電話を解析したところ、消去されていた留守電のデータ復旧に成功しました。おびただしい回数、留守電はかかってきており、内容からして、追切壱くんを連れ去った可能性はかなり高いです。こちらが、詳細をまとめた資料です。」
成に渡された資料にさっと目を通す
おびただしい回数よりも、メッセージの内容に驚いた
「''殺す''って…」
「発信者は恐らく内田翔吾27歳会社員。壱くんは男娼をしていたという情報から、その周辺地域で有名なハッテン場に潜入しました。そこにいた内田翔吾をよく知る人物の話によると、彼は壱くんの1番最初の客であり、異常なまでに壱くんのことを溺愛していたと…」
「なるほど、それで、身売りを辞めて連絡も途絶えた壱くんに裏切られたと思い、逆上ってところか」
「はい、恐らくそうだと思われます」
ということは、やはり、内田翔吾は壱くんを誘拐し、捜索させないように浩に壱くんのふりをしてメールをしたんだろう
浩との関係は、まあ携帯をみればすぐにわかっただろう
「ちょっと待て、」
ボスの声に1度思考を停止させる
「その内田翔吾をよく知る人物って、そんなにも簡単に情報を漏らすのか?その情報は信用できるものなのか?」
確かに、知らない相手にそういった情報を漏らすものなんだろうか
普通だったら警戒するはず…
はめられているのか?
頭にハテナマークを浮かべるボスと俺に、成は、はぁ、とため息をつく
「男が気を許す方法なんて、1つしかありません」
ピタリと静まり返る空気
やべぇ、地雷踏んだぞ、成
「成…お前、まさか…」
ほら、
「そいつに脚開いたんじゃないだろうな…?」
だって、
「ええ、そうですが…」
ボスが、
「成、今晩、俺の部屋に来い」
お怒りだ
「…?はい、かしこまりました」
成、俺は君の無事を願うよ…
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