アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
Ⅲ.. 子犬への牽制
-
声を聞くと、姿を見かけると、身体が反応して隠れてしまう。
そもそも、あの子のお気に入りを否定した時点で、僕には傍に居る資格なんてないんだ。
ないんだけど…。
「子犬」
ごめんね、僕は君を攻撃してしまう。
「んだよ。犬じゃねぇよ」
「いいから。黙って着いて来いよ」
有無を言わさない笑顔でそう言うと背中を向けて空き教室へと向かった。
「で、なんだよ」
教室に入り扉を閉めると、子犬が口を開いた。
僕は振り返り向き合い、この苛立ちをぶつける。
「近いんだよ、一々。なちにくっつきすぎ、離れてくんない?迷惑でしょ」
「無理だな。俺が距離置いたらあいつが悩むの、あんたがよく知ってんじゃないの」
「っ…」
子犬は正しい。
なちは仲間を大切にする人だ。些細な変化も見逃さない、僕達をよく見ている。
それでも。
「と、とにかく!ベタベタしてたらただじゃおかない。あんたのこと認めてないから」
キッと睨んで僕は教室を後にした。
こんなのめちゃくちゃだ、ごめんね子犬。
屋上に続く階段の途中、僕は蹲りやり場のない感情を押し込めるため、声を抑えて泣いた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
53 / 65