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本宮side①
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何だか様子がおかしい。
久し振りの京都、久し振りの景色…俺は夢中でシャッターを切っていた。
仕事ではいつも被写体は人物だったからそれ以外を被写体に写真を撮るのは楽しかった。
ひとしきり写真を撮って部屋に戻ると、既に何かがおかしくなっていた。
澪は部屋の隅で膝を抱えて座っていた。
その後何があるという訳ではないのだが何故だかよそよそしい。
気になって「何かあるのか?」と聞けば「何もないよ」と笑顔で答える。
本来なら気にもとめないいつもの会話なのだが…今回は何か違う気がする。
「あれ?今度は隼也?」
一人風呂に行くと澪が出ていったので俺はロビーでコーヒーを買って座っていた。
そして悩んでいた。
そこに女将の登場という訳だ。
「今度ってどういう事だよ」
「今日隼也が写真撮ってる間澪くんもここに座ってたから…あ、澪くん大丈夫だった?」
「?…どういう事だ」
「澪くんがここに居た時に少し話したんだけど急に泣き出して部屋に戻っちゃったから」
急に泣き出してって…。
澪の様子がおかしかったのはコイツのせいか…。
「なんの話してたんだよ」
「んー…隼也のお見合いに付いて来てくれたんでしょって…」
「っ!?」
ああ…原因はそれか…。
これはもしかすると非常にマズイかもしれない。
「お前、あいつに見合いの話したのか!!」
「え…してなかったの!?」
「当たり前だっ!!」
柄にも無く感情的になってしまうがそれも仕方ないだろう。
さてどうしようか…。
澪の奴絶対に誤解してるな…。
俺は深くため息をつく。
「何もない」なんてやっぱり嘘じゃないか。
「隼也…このお見合い断るつもりで来たの?」
「ああ。親もうるさいし直接断れば親も見合い話を持って来なくなるかと思ったんだ。あいつと旅行ってのも初めてだし、いい機会だと思ったんだが…」
こんな事になるなんて最悪だ。
あの時澪を一人にしなければ…。
あの時俺が写真に夢中になっていなければ…。
そんな考えは今更無意味だと解っているのに、俺の脳みそはその思考を止めるつもりはないらしい。
「澪くんの事…すごく大切なんだね」
「っ!?」
「何で分かるんだって顔してる。隼也分かり易いよ。こんなに感情的な隼也見たの久し振りかも。澪くんが大切な証拠でしょ?」
なんでもない様にこいつはいつも通り笑って話している。
昔からの知り合いには敵わない。
そんな事まですぐにバレてしまうのか…。
「あいつは特別だよ…。俺なんかの為にコロコロと表情を変えて…でも全然素直じゃなくて。あいつは辛い事を辛いって言えないんだ。だからあいつにはいつも笑っていて欲しいと思う」
そう…それが俺の本心…きっと。
今までこんな事誰にも言った事なかったから自分でも不思議な感じだ。
それでもこの言葉が俺の素直な想いで、俺はずっとそう思っている。
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