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当たって砕けろ
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「そういえば前言ってた友達の友達とはどうなったん?」
リョウさんが思い出したように切り出した内容は、以前ラーメン屋で相談した健人とのことだった。
「…あ、えっと…髪を、その友達のお姉さんに切ってもらったりして、少しは仲良くなれたかもしれないんですが…
……最近は、なんか僕の方から避けちゃって…彼は何も悪くないんですが…」
健人は悪くない。潤も悪くない。
健人はきっと、僕と友達になろうとしてくれていた。
それから逃げたのは僕だ。
健人からも、潤からも。
一条のことを知られたくなくて避け始めたけど、彼らからすれば僕が勝手に輪から外れた訳だ。
自分から逃げる奴と、わざわざ友達になりたいと思う人がいるものか。
「その子らはもっちーを待っとるかもしれんよ」
「え…?」
「もっちーから話してくるのを、待っとるかもしれんよ。
一遍話しかけてみるのもええんやない?
そんでまた仲良うなるのが無理やったら、そん時はそん時や。
それとももっちーは、もうその子らと話したない?」
「いえ…」
話したくない?……話したいよ。
また、あの屋上に戻りたい。
また潤と健人の笑顔を隣で見たい。
前は出来なかったけど、出来るなら僕も一緒に笑いたい。
あれだけ避けたくせに、逃げたくせに、今になってあの日々の幸せに気づいた。
でも、もう僕は彼らとは違う。
男に犯されて、快感を感じてしまった…
僕は汚い。
傷だらけの身体は、中まで汚れてしまった。
もし彼らに知られたら、二度とあの陽だまりには戻れなくなる。
「当たって砕けろやで、もっちー」
リョウさんの人差し指に額をトンと押され、反動でいつの間にか俯いていた顔が上がった。
「当たってもし砕けても、俺はここにおるで!」
「っ!」
心臓がドクンと一度大きく打った。
身体の中を血が勢いよく流れ、全身が痺れる。
指先まで体温が上がって、目頭がジンと熱くなった。
駄目だ、なんか…また泣きそう…
胸をドンと叩くリョウさんは、窓から入る朝日のせいか眩しいほど輝いて見えた。
「…かっこ良すぎですよ」
涙を堪えて微笑むと、リョウさんも吊られたように笑った。
「ほんま?お世辞でも嬉しいわぁ」
「お世辞じゃないです。昨日からリョウさん、凄い男前です」
「もっと前から男前やったで!」
「ふふっ、そうですね!」
昨日の自分と今日の自分は、きっと何かが違う。
変えてくれたのはリョウさんだ。
感謝しきれないほどの感謝。
いつか、返せるだろうか。
実際問題はまだ何も解決してない。
でも、今まで躊躇っていた一歩を、今日は踏み込めそうだ。
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