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鳥籠の鳥
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帰宅すると、朝のまま散らかった部屋で一条はスマホをいじり、母さんはぼーっとテレビを見ていた。
見る限りでは、母さんは今は落ち着いているようだ。
荷物を置いて改めて荒れた部屋を見渡す。
居間も台所も寝室も、家中酷い有様だ。
まあ家と言っても狭いので、この惨状も二、三時間あれば片付けられそうだが。
…とりあえず、危ないから割れた皿から片付けよう…
床に屈んで破片を拾っていると、手元に影が落ちた。
「今日はバイトないんだね」
一条が母さんに背を向けるように、僕の横にしゃがむ。
いつもの、人の良さそうな笑顔を貼り付けて。
嫌な予感しかしないが、一度目と目が合ってしまえば自分からは反らせなくなった。
「…あ、明日から期末試験なので、バイトはその間休むことにしたんです…」
一条はふーん、と呟くと、母さんの様子を確認するように一度後ろを振り返った。
その隙に手元に視線を戻す。
人と目を合わせるのは昔からあまり得意ではないが、一条が相手だと特に苦手だ。
それは一条の冷たい目つきのせいか、一条への恐怖心からなのか。
どちらにせよ、すぐそばに彼がいるだけで冷や汗が出てきそうだった。
すると突然一条の手がするりと僕の尻の方に回り、ズボンの上から孔のある位置をなぞるように触れてきた。
その手つきが気持ち悪くて、ぞわりと肌が粟立つ。
二日前に久しぶりに犯されたことを思い出して、無意識に後孔が締まる感覚がした。
「じゃあバイトの代わりに今夜は俺への奉仕ね」
耳元で低い声で囁かれる。
一条の言う「奉仕」が何を意味するのか、分からないほど鈍くもない。
ノーと答えたいのに、すぐに言葉が出てこなかった。
そして僕の返事を待つことなく、一条は立ち上がって部屋に戻ってしまった。
早く拒否すれば良かったのに、と数秒前の頭が真っ白になっていた自分を責めるが、拒否したところで効果があるのかと言われたら、とてもじゃないがあるとは言えない。
ノーと言っても一条は強行しただろう。
決めるのは一条。一条の気まぐれ。
僕に拒否権はない。
この狭いアパートから、逃げることもできない。
まるで、鳥籠の中の鳥みたいだ…
今日は早く寝たかったのになぁ…
早く夜が終わればいいのに。
早く朝が来ればいいのに。
抵抗するのでなく、嫌々受け入れるようになったのは、いつからだろうか。
今更、自分が酷く汚れている気がした。
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