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保健室 (潤side)
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突然、本当に突然だった。
立ち上がった葵は元々白い顔を更に青白くさせ、糸が切れた操り人形のように崩れ落ちた。
「葵っ!おい、葵!!」
大声で呼んでも反応は無い。
とにかく保健室に運ぼうと思い、葵の体を横抱きに持ち上げる。
そういえば初めて葵と話したあの日も、こうやって抱いて保健室に運んだ。
3ヶ月前のあの時もその軽さに驚いたが、今はさらに軽くなった気がする。
強く抱きしめれば壊れてしまいそうだ…
力の抜けた葵の体を抱いて階段を駆け下りる。途中すれ違う生徒に何事かと言う目で見られたが、気にもならなかった。
一階の保健室に入ると、養護の女性教諭もギョッとした目で俺と葵を見た。
とりあえずベットに降ろすように言われ、葵をそっと寝かせる。
「どうしたの?」
「立ち上がったら急に倒れたんです」
そう言うと先生は葵の頬や首に触れ、顔色を見た。
「熱はない、脈拍も異常なし…でも顔色が酷いわ。
貧血か過労ってとこかな…。極度のストレスも一因かもしれない。試験期間だったしね。
目を覚まさないし、とにかく一度病院に連れて行きましょう。悪いけど、私の車に運ぶの手伝ってくれる?」
「はい」
横たわる葵の体に手を伸ばすと、痩せた手に腕を掴まれた。
「…大丈夫です」
目を覚ました葵がゆっくりと起き上がる。
「葵!全然大丈夫じゃないだろ!?倒れたんだぞ?」
「ただの寝不足だよ。
今ちょっと休んだら大分良くなったし、家帰って休みます。すいません、お騒がせしました」
先生に向かって軽く頭を下げた葵は、ベットから降りてふらりと立ち上がった。
先生は困り顔で葵を呼び止めた。
「自力で家に帰れそうなら止めないけど…しっかり休まなきゃダメよ」
「はい、ありがとうございます」
葵は再度お辞儀をし、まだ少し覚束ない足取りで保健室を出て行った。
先生と二人きりの保健室で、隣からため息が聞こえた。
「どうかしましたか?」
「いや…あの子、随分痩せてるわね。
顔と首元しか見てないけど怪我もしてたから、何かトラブルにでも巻き込まれてるのかなって思って…。考え過ぎだといいんだけど」
考え過ぎ、ではないと思う。俺も初めてここで葵の傷を見たとき、同じことを考えたから。
そして今もまだその疑念が払拭しきれた訳ではない。
「俺にも…あまり話してくれないんです。
今の怪我は酔っ払いに絡まれたらしいんですけど」
「そう…」
葵は自分のことはほとんど何も話さない。
やっぱり聞き出さないと駄目かな…
「あんな状態で帰して大丈夫なんですか?」
「病気って訳じゃないからね、しっかり休めば良くなるはずよ。幸い明日は休みだし、ゆっくり休む時間はあるでしょう」
「そう…っすね…」
そう答えたものの、どうにも胸に募る不安が拭いきれなかった。
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