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過去と後悔 (潤side)
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「____それから母さんは人が変わったように僕や弟に暴力を振るようになった。色々あって弟は今別の家で暮らしてる。
僕は父さんが死んでから新聞配達のバイト始めて、高校に入ってからは潤の知ってるようにガソリンスタンドのバイトも始めた」
葵は淡々と言葉を紡いでいるが、その内容は想像以上に悲しく辛いものだった。
俺は途中で何か言おうにも言葉が見つからず、黙って最後まで聞くことにした。
「父さんが死んでからあのアパートに引越した。
弟が家を出て、僕と母さんと2人暮らしだったんだけど…… 健人と初めて会った日だったかな、母さんが知らない男を連れてきた。
それがさっき言った居候の男、一条翼。
……ここから先の話は潤を不快にさせるかもしれないけど…聞く?」
「ああ」
うなずくと葵は、少し悲しげに目を下げて静かに深呼吸をした。
「…10月末、一条がうちに来てから十日くらい経った頃、母さんが出かけて家には僕と一条の二人が残された。
彼が何を考えてたのかは知らないけど…一条は力ずくで僕を押さえつけて……その日初めて、犯された。
…それからは何度も、母さんの目を盗んでは弄ばれた。
一条は母さんにバレても気にしないような態度だったけど、僕はバレないように必死だった。
今日、家に帰ったら母さんはいなくて、一条はまた僕を犯した。
その時、母さんが帰ってきてしまったんだ。
…最近母さんは精神的に不安定になってて、取り乱した母さんに灰皿で頭を殴られて気を失った。一条と母さんは逃げて、どのくらい時間が経ったかわからないけど、潤が来た。
…ごめん、こんな重い話して……男が男に抱かれるなんて、気持ち悪いよな…」
俯く葵の顔は見えないが、どんな表情をしているかは想像できた。
そんな葵に何と言葉をかければいいのかわからなかくて、口を閉じる。
知らなかった。
そんなに前から葵が苦しんでいたなんて。
そんなに辛いことを一人で抱えていたなんて……
思い当たる節はいくつもある。
体が痛そうにしていることも、怠そうにしてることもあった。
当時の俺が何でもないと思っていたことは、葵にとっては辛いことの後遺症だったんだ。
…そういえば11月の初め頃、葵が俺や健人を避けていた時期があった。今の話だと、それは葵が一条とやらに初めて襲われた日のすぐ後ってことになる。
…なんで聞かなかったんだろう。
なんで支えになってやれなかったんだろう。
後悔するには今更すぎる。でもそう思わずにはいられなかった。
…今からでも俺は葵の支えになれるかな…
せっかく葵が話してくれたんだ。
こんなこと、誰にも話したくなかっただろう。
俺は、それに応えなきゃならない。
「気持ち悪くなんてない。そんなこと、欠片も思ってない。…話してくれてありがとう。
俺はずっと、葵のこと知りたかった。
でも俺が踏み込んでいいのか分からなくて、聞くことができなかった。
…もっと早く聞いてやればよかったな。
今日も、俺から聞かずに葵から話させて。
結局今まで俺何もできてなくて……ごめん。」
静かに頭を下げると葵はスクと立ち上がった。
その目は辛そうに細められていた。
「やっぱり無理だ……打ち明けても打ち明けなくても、潤と元のような友達には戻れないよ…
ごめん、僕…帰る」
そう言い残すと、葵は背中を向けてドアノブに手をかけた。
「待て葵!!」
咄嗟に叫ぶと葵は動きを止めた。
帰らせたくない。その一心だった。
…………今しかない。
「それなら俺も…もう今までみたいに葵と友達ではいられない。
________________好きだ」
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