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「マキ」
さっきとは全く違う声音で、不安そうに自分の名前を呼ぶ深山に、蒔田は怒りにも似た気持ちを覚える。さっきはさんざん煽ってきたくせに。
もちろん、この感情がお門違いだってことは蒔田だって十分なほど理解しているけれど。
目の前の、濡れた唇をふさいでしまいたい。乱れた襟元の浮き出た鎖骨のあたりを吸って、押し倒して。深山が嫌だって泣いても怒っても、この行為をとめないで、最後まで。蒔田の思う男同士のやり方が、正しいかはわからないけれど、してしまえたら。
この人の抱えるトラウマとか、恋愛下手とか、そういうのを、いつか自分が取り除けたら。ずっとそう思ってたのに。
煽られて、相手の都合お構いなしにしたいことをして。なのに、ちょっとした言葉に。今の蒔田は勝手に傷ついていた。
よほど、怖い顔をしていたんだろう。深山が蒔田の頬へと手を伸ばして、もう一度、
「マキ?」
名前を呼ぶ。
蒔田はその手を取って、また口づけたいと思った。初めから、やり直したい。
だけど。
「ハヤシライス」
蒔田の口からかすれて出た単語はずいぶん場違いで。すごく浮いていた。
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