アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
4-27
-
「だから。しばらく、キョリ、置きましょ」
これだけ言い捨てたら、逃げるように部屋を後にしてしまった。とまどって服が乱れたまま、泣きそうな目をした深山を、置き去りにして。
初めての場所だから、やみくもに走ったら目的地にはたどりつけない。蒔田は人生何度めかの感謝をグー◯ル先生にささげて、地図アプリに導いてもらう。
駅にたどりついたときには、後悔と焦燥。やっと手に入れたと思ってた年上のあの人を、失うかもしれない…いや、もう失ったのかもしれない。
かたく目を閉じて、蒔田からの口づけに耐える様子を思い浮かべて。
「ミヤさん、」
ここにはいない、大切な人の名前を呼んだ。ここで朝、名前を呼んだときの幸せな感覚がありありと思い出せるのに。そばにはいない。
「だせぇ…失恋」
自分のこれまでの言動を反芻して、情けなさに思わずひとりごちる。
だけど、蒔田には。これまでの手順を思い浮かべて、時期尚早だったとはどうしても思えなかった。それくらい、大事に育ててきた。この気持ちを。
―好きだった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
263 / 360