アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
4-51
-
その写真は、ベアーズの(ダサいとは言わないまでも草野球ならではの色合いの)ユニフォームに身を包んで、打席にたつ深山の姿を写したもので。
―蒔田が柴田たちに、深山が最初に河川敷での野球に参加したときに、面白半分に送りつけたものだった。
今夜が山だと言われた夜を幾日も乗り越えて、一度、うっすらと意識を取り戻したときに。
そばについていた母親は、その写真を(この時には丁寧に、引き伸ばして写真たてに入れられていた)、起き上がれない祖父の眼前に掲げて、
「ゆうとが、また、野球始めたんですって」
そう伝えたというから。
その下りを、直接見ていなくても。
蒔田の涙腺が弛むのをとめられるはずがなかった。
じいちゃんが写真をちゃんと見られたのかどうか、それを見て、反応はあったのかなかったのか、はっきりとは誰にもわからない。
「だけど、確かに。俺は、あの写真があったおかげで、じいちゃんをきちんと見送れたと思うから」
マキにありがとうって言わないとって。
あのまま、ケンカ別れみたいになったら嫌だって。思ったんだ、と深山は微笑んだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
287 / 360