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2-11
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深山はうんとも、やだとも、言わなかった。
でもグラブを左手にはめて、その真ん中をぽんと打った深山の姿は。ボールに触れるのが数年ぶりとは思えないくらいしっくりくるものだった。
そのまま特に言葉を交わすことなく、蒔田は深山から数メートル離れた場所に動く。最初は近くから。
「んじゃ。いきまーす」
返事はないけど深山の構えは完璧だ。はじめは緩く胸元めがけて投げる。ボールがグラブにリズムよく収まる音が小気味いい。
少しずつ距離を広げて、球の勢いも強めていく。何十メートルも離れて、だんだん遠投みたいに遠くなって。西日を横から浴びたお互いの顔が見えにくいほどになっていった。
やっぱり、いい。普段みたいに中学生相手だと、こんなに距離をとることもないし。力加減なく投げることもできない。お互いに顔が見えなくてもモーションでわかる。それに、あうんの呼吸というか。
同じくらいのレベルだからできる気持ちいいキャッチボールに、しばらく夢中で投げあって、気づけば薄暗くなっていた。
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