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それからの蒔田は、部屋に戻っても心はここにあらずで。自分が歌う番をなんとかこなして、隙あらばちらちらとスマホに着信がないか、何度も確認していた。
もともと喉が強くなくて(数曲歌うと声がハスキーを通り越してつぶれてしまうから)、途中からは聞く側に回ったせいで、余計にスマホが気になってしまって。かなり顰蹙をかう行為であることは自覚している。
そんな自分の女々しすぎる行為に蒔田はうんざりしていたけれど。カラオケにいる間、深山からはメッセージも電話も、かかってくることはなかった。
翌日には下宿に戻るという日程上の都合だけではなく、三次会という名の徹夜コースに付き合う気力は蒔田にはもうなくて。数人の二次会で帰るメンバーとともに駅に向かった。
---やむを得ず、千佳も一緒に。
最寄り駅で降りたら、いよいよ千佳と二人きりで、来るべき時が来た、というような緊張感が漂う。
「あのさ」
それまで、野球部のみんなといたときとは明らかに違う声音で千佳が切り出した。
眉をあげて横を歩くはるか下の千佳の顔をみやると、幼馴染みの見たことのない真剣な顔があった。
「さっきの電話。たっちゃんの大事な人との電話だったら、ごめんね」
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