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天使の構造‐1
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某、有名私大。
附属病院のそこは、キャンパスも併設されて、老若男女けっこうな人が行き交う。
真向いで、理想的だと本人だけが思っているだろう笑みを湛えた中年の看護婦が何度目かの答えを返した。
「だから、症状を説明してくれてね?適切な科を推薦してあげられるのは、わたしの仕事なんです。そろそろわかって下さらないものかしらね」
私は、この話が全く通じない、バカな女を張り倒したい気持ちでいっぱいだ。
症状は説明した。
この子の胸が変だと。
「それとね、あなた達、未成年でしょう?保護者の方はどこなのかしら。保険証もないわけないわね?身なりだって清潔そうだし、きちんとしたお家から来ているのはわかります。どうしてあなた達だけでここにいらしたのかしら?」
お金ならいくらかかっても払えると、先程、銀行の袋に入って帯のまかれた札を二束見せた筈。
金があるのに、何故、私の話を聞き、この役立たずから、きちんとした医師に相談役を変更しないのか。
私が求めているのは、医師であって、この小太りな女看護師ではない。
「お医者さんは、話を聞いてくれないんですか。病院なのに」
「だから、総合病院でしかも大学病院のここは、いろんな診療が受けられる分、いろんな病気に対応するから、どこか漠然・・・あら難しいかしら?どこかが変、程度で、じゃあ、何科に行けばいいとか言えませんよね。少なくともわたしは、あーでは、それならば、この科がいいかもしれないと推察・・・推薦・・・進めてあげられるんですよ。お分かりいただけますか?」
子供だと思って、すっかりバカにした態度で、小一時間以上話し続ける私達を、周囲の看護師スタッフも呆れ見ている。
「わたくしどもは、そもそも、紹介状のない患者さんは、原則的にお受けしないんです。そこを話を聞いているってことが、特例なんですが」
大げさな溜息を、私の後ろで、ダッフルコートのフードを被ったまま着込んで、私のジャケットの裾を握り、かすかに震える千色が聞き、ぴくっと身体を竦ませる。
他の年若な看護師が側に来て、こそこそと耳打ちした。
「もう、帰ってもらいなよ」、と。私の耳は、申し訳ないが、かなり高性能なのだ。
「中村婦長代理、ちょっといいですか?」
受付カウンターに立つ女に用があるらしい、若い男性医師が、カウンター中の通用口のドアから顔を出す。
「すいません。立て込んでいますけど、なにか?」
「いえ、じゃあ、後でいいです、けど・・・・・・どうかしたんですか?」
医師だ。
見るからに経験年数が低そうな、頼りにならなそうな。
見目だけは、ドラマに出てそうな、イケメン俳優も真っ青な出来る風な青年医師。
「ああ、いいです。佐倉先生には、いいですから」
中村と呼ばれた女看護師は、鼻であしらっている。
「あなたは医者ですよね?」
「ん~、まあ、医者ですね。国家試験は通ってますよ。婦長代理には、そう思われてませんけど」
すっごく爽やかに微笑みながら、痛烈な嫌味を繰り、青年医師は言う。
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