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私や千色のある程度の、世話が出来るものがいいだろう。
それを、きちんと、千色に教え、行く行くは、千色と二人で暮らせるように仕込んでくれそうなしっかり者。
若くて、千色の身体のことを、相談できるような相手がいいと思う。
「そんな、何故でございますか?このお屋敷を勝手にお出になられるなど
大旦那様が、ご承知なさいませんでしょうに!」
老執事は、声を怒りに震わせる。
それに、追従しようとする老家政婦長は、私にひと睨みされると、そそくさと任を実行するために去る。
味方を失い、心細げな表情を一瞬浮かべた彼は、へこたれず、また叫ぶ。
「大旦那様が、あの卑しい化物を遠ざけなさったのは、偏にお家の為を思ってでございます。
万が一、あの物とのことが、公に知られてしまったら、大変でございます!」
「ならば、お前の大事な、大旦那様に、こう、ご報告しろ。
私は千色を奪われれば、すぐにでも死ぬぞと。脅しではない。
絶望する私に、あれを与えたのは、紛れもなく、祖父なのだ。わかる筈だ、私の言う意味は」
わなわなと、彼は震えながらも、勇敢な老人で。
長年、この祖父しかいなかった陰気な屋敷を、祖父の為に守ってきた男。
私の父は、この家を嫌って、結婚の後、別居したのだそうだ。
昔、別荘で、使用人達が話しているのを聞いた。
「私は、井水の跡取りだと言うことを、捨てるわけではない。
だが、こんな卑怯な手で私から千色を奪うならば、それも捨てても一向に構わない。
幸いなるかな、私には、個人資産がそこそこあり、両親の遺産もある。
ここを出ても、千色と二人でつましく暮らすことは容易だ」
私が勤めて声を荒げず、冷静に対応し、無理を通せるのは、祖父のお蔭でもある。
あれが、私に教え込んだ、年頃以上の知識や佇まいは、こういう時に役に立つのだ。
何か、言葉を探して唸るばかりの執事を後目に、家政婦長の次くらいに権力のある女が呼びに来た。
書斎で、ずらりと居並ぶ、女使用人の顔を眺める。
ああ、こんな時、ミナがいてくれたならと、思う。
現家政婦長の前の家政婦頭、老女ミナは、身体を壊して、一昨年他界していた。
千色の言った娘は、すぐにわかった。雀斑の浮いた、小さな体付きの子だ。
貧しい出自で、孤児院上がりだと言うのも、仲がいい一つの要因のようだ。
あと、一人・・・ん、この生意気そうな娘はどうだろう。
「その、厨房服を着ている、そう、君。君は、ここから私の家に移ってくれてもいいかな。
厨房服を長く着ているようだから、料理も一通りできるんじゃないかな、どうだろう?」
「な、なりません。この者は、言葉遣いも粗野で、問題児で・・・」
即、本人が答える前に、老家政婦長が、がなり立てる。
ふふふ、決定だな。
「どうかな、広範囲に家のことを先ほどの子と一緒にお願いすると思うが
ここよりも大きさは三分の一に満たないし、庭師はもういる。
家内のことと、千色と、私の世話を頼みたいんだが。お給金も、1.5倍は確約しよう」
「千色は、どういう、扱いっすか?」
野生猫みたいな強い光を湛えた瞳が、私を射抜く。
「あの子は、私の専属の世話係だけど。あの子自体、身体に不安がある。
あの子を、サポートして、育ててくれる存在であって欲しいと思っている、で、どうだろう」
「わかったよ。あたしも、あの子はいい子で気に入ってる。やってやろう」
私は、彼女達と固く握手をした。
彼女たちに早速、一緒に来てもらう。
千色の幸せそうに眠る、私の寝室だ。
そこで、私は、二人に秘密を打ち明け、幾何の金を渡す。
「これで、千色が家で楽に過ごせるものを、とりあえずでいい、揃えて来て欲しい。
そして、これが、新しい住所だ。ここに君たちの荷物も送ってくれたまえ。
明日の夕刻までに、来てくれるかい?」
私は、千色が目覚め次第、ここを去るからね。
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