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翌々朝、女だてらに大型車両免許も保持し、家に来るまではダンプの運転もしていた運転手に頼んで
観光バスを借り、運転してもらい。私達の主従は揃って避暑に行くことにした。
遠藤だけ、自家用車で行き、あちらでの足は、主に遠藤に頼むことにしている。
「あまり千色くん本人に合わせるのは気が進みませんね。事情を確実にご存知でしょうから」
「そうだな。知らなくてもいい事情の可能性があるな、そんなに話をしたがらないところだと」
もしかして、これは、私の勝手な行動かも知れないと躊躇はあった。
だが、IQが高く万事に聡い千色を以ってして、きっと母親は愚劣ではないとわかるから
こんな愚行を何故、生まれたばかりの我が子に出来たのか興味をひかれた。
阿川医師に学んだことだが、千色の様な子が生まれたら、きちんと届け出て、
医療施設にそれなりの保護と国からの補助を受けることが出来たらしいのだ。
生まれた時、既に、母子家庭だったことは、千色の口から聞いている。
困窮する生活費の足しになったのではないかと、思うのに。
「まあ、いい。行ってみよう。阿川医師も出来れば、知りたいと仰せだし。
ありがとう、遠藤も、明後日は長距離を運転してもらうんだ、もう休んで体力を温存してくれ」
「はい、そういたします。この度は、新車を購入して頂いて、こちらこそありがとうございました」
自家用車といえども、どうせ、我が家の用向きに走ることばかりなのだからと
遠藤にボックスワゴンを買い与えた。彼の車はおんぼろの古いセダンだったので。
「乗り心地はどうかな?」
「いやあ、最高です。今時の車はシートが上等で。
荷物もいっぱい詰めますし、お嬢方のご要望にもいつでもお応えできます。
最大7人乗れますから、皆さんで、あちらに行ったらお弁当を持ってドライブも出来ましょう。
もちろん、社長には内緒でございますが」
運転手はそのまま孫の夏休みの為に休暇が欲しいと言うので、休んでもらうことにした。
あちらに行けば、祖父の監視の目も緩み、けっこう自由が利くだろう。
千色を可愛らしい服装にして、一緒にどこかに遊びに行こうと思っている。
近所の小さな美術館、博物館、牧場、景勝地。そのついでに、件の教会へ足を運ぶ。
地元ではかなり有名な教会のある修道院なのだそうだ。
「そうだな、楽しみで仕方がないよ。ロコにドックランを作ってあげようと思うんだ。
この庭の様なのを、あちらにも。手伝ってくれるかい?」
「はい。お二人のお邪魔でない程度に、御助力いたしますとも」
ロコはこの酷暑が過ぎて季節が落ち着いたら、手術をする。
メス独特の組織に癌が見つかったので、摘出するのだ。
もっと早く、幼いうちに避妊手術をしてあげていれば、こんな病気にならなかったのにと獣医に言われ
千色は悲しそうにロコを抱きしめて、撫でていた。
ロコの摘出するのは、子宮。
以前、子犬を生ませたくて、ブリーダーに頼み、番いを探させたが、お見合いの段階でロコが嫌がった。
ならば、発情期に種付けだけでもと、試みたら、追い回されて逃げるロコが哀れで
千色がつい抱き上げてしまった。それから、子犬なんかいらないから、ロコだけ可愛がって行こうと
その時に、私達は、相談し、決めてしまって。
千色の身体の事や入院騒ぎ、急な引越し・・・・・ここ最近の急激な環境の変化も悪かったのか
6月末に体調を崩し、いつもの月の物とは様子が違うと、千色が訴えたので、獣医に見せたら、そうだった。
早期発見だったから、再発防止の為にと決意したけれど。
千色にはどこか、身につまされるものがあるようだ。
気落ちして、塞ぎこんでしまった。
散歩に連れて行けないこともあるし、ならば、屋敷にドッグランを作ってやろうと計画し
慣れないながら、二人で、チワワのロコにはけっこう贅沢なスペースの物を作れた。
晴れた日に、思う存分、芝の上を駆け回るのを一緒に眺めていたら
別荘にも、作ってあげたいと言うので。
「千色くん、結局、夕餉、食べられなかったようですね。お可哀想に」
「ああ。ちょっと今日の検査が酷くて。ショックなのと、貧血で、起きられないみたいだ」
「酷い?結果が、ですか?」
「違うよ。なんというのだろうね、あれは、人権侵害に近いと、私は思ったよ」
今日は、ここ数回受けていた、阿川医師のご実家がやっている婦人科での検診ではなく、
大学病院での精密検査を課せられ、私達は、開院時間から閉院時間くらいまで過ごさされた。
阿川医師が実に、申し訳なさそうに、涙を浮かべて詫びてくれたが
こういう定期検診が季節ごと1度はあるだろうと言っていた。
千色の身体は、医学研究の場でもある大学病院でも、滅多に出会えぬ症例だ。
だが・・・あの患畜の如き扱いは、酷過ぎると思う。
阿川医師が金切声をあげて制止してくれたが、
必要もなく、千色の秘部に触れようとしたどこかの研修医。
ガラス越しに凝視する医学生や関係者達。
そんな殆どが必要ない人の興味本位な視線の中、千色は身体を弄られ、撮影された。
次回から、こんな酷い環境でしないで欲しいと、懇願する私に、阿川医師と専任の教授は快諾してくれたが。
千色の誰にも見せたくない身体を、顔を写してはいないとは言え、
最も、人目に晒せぬ恥部の映像資料を、これからも撮られ続ける。
モルモットのようだと、千色が言うのは、尤もだ。
15歳の多感な、少年でも少女でもないものであると、宣告されて間もない哀れな人の子に
していい処遇では、絶対に無い扱い。これを患畜と思わぬものなどいないだろう。
生理周期の大概予想が立ったことでもらう筈のよりも、貧血の症状が重い千色には、
ピルではなく、鉄剤を処方されていた。
あれから2度訪れた憂鬱な日々では、眩暈が酷くて起きていられなくて。
今日も、生理が明けて幾ばくもなく、やっと久方ぶりに終業式に学校に来れた翌日だ。
ホルモンバランスも女性7:男性3で、安定しそうだと言われ。
諸々の結果も併せて、千色はすっかり無口になってしまった。
蒼白の冷たい身体を、私に横抱きにされて、車に乗り、帰路に就いた。
それから、私室に送り届け、休みたいと言うのでベッドに横たえた所、そのまま寝付いてしまって、
さっき、あかねが部屋に運んだ食事は、食べられないと泣かれてしまったらしい。
「食べられないけど、大丈夫だから、別荘に行きたい」と言っているから、と
あかねまで、泣いて私に頼むから、予定通りにするけれども。
「心配ですね。でも、あちらでのんびりすれば、気も晴れるやもしれませんよ。
暗くなっていてはいけません。そう、今回ね、ハンモックを買ったのですよ。
これを木陰に吊って、ロコが遊ぶのをお二人で眺めてみてはいかがでしょうか?」
遠藤が、病院でのことを思い出して陰鬱とする私を取り成して、明るい声で勧めてくれた。
私も、そんな遠藤やあかねの、優しい気遣いを嬉しく思い、大切にしていきたい。
「二人が乗っても大丈夫なのか?」
「はい、とっても丈夫な2人乗りのを用意しております。試し乗りをお嬢方が済ませましたが
びくともいたしませんでしたよ。きっと、お昼寝にも最高ですよ」
少しずつ、溶かしてあげよう。千色の不安と恐怖を。
あの、楽しい思い出ばかりの別荘で。
◇◇◇◇◇
高原の別荘地に過ごして数日。
やっと、起きて、皆と食卓を共にできるようになった千色と、薄曇りで涼しいから
庭でドックランの候補地を選定しながら、ロコも交えて散歩をする。
「日差しはきつくないかい?暑くないかい?辛い時はすぐに・・・・・・」
「大丈夫です。僕が連れて行って下さいってお願いしたんですよ?ロコも嬉しいね~」
私の危惧を即座に打ち消して、千色はふんわりと笑ってくれる。
つばの大きな麦わら帽子と、木綿の緩やかで荒い織りな白の七分丈のチュニックワンピースに
デニムのサブリナパンツ姿の、初夏の装いの彼は、愛らしく。
私達の足元を嬉しくて仕方がないように纏わりつくロコに話しかける。
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