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こくんと、唾を飲み。
男性にしては殆ど隆起していない喉仏辺りがひくつくのを見る。
「今夜、新さまの・・・・・・寝室にお邪魔しても、宜しいでしょうか」
それは・・・私の、待ちに待った言葉だよ、千色。
恥ずかしそうにロコを抱き上げて、部屋に戻ろうとする背に、語りかける。
「ありがとう。待っているから」と。
それから、千色は私室で夏休みの宿題をすると、閉じこもり。
夕飯に顔を見せ、共に食卓を囲むときも、無口で。
あかねに、具合が悪いのかと気遣われ、首を横に振っている。
あまり食も進まないようで、そっちは小百合に叱られて、
叱りながらもメニュー違いの冷たくしたコーンスープを持って来て、それを飲まされていた。
緊張してるってのが、痛いほど伝わって。
居たたまれずに、先に食堂を出て、書斎で内容が頭に入らない読書で時間潰し。
湯殿の準備をしてくれた、あかねが内線をくれたので済ませ。
寝室で、私は、今宵に入用なものを、準備している。
あからさまにナイトテーブルに並べるのも・・・・・・変だよな。
引き出しに収めて、機を逃さずに使わないと、普段使ってないものを
千色が嫌がっても困るからと、また、出して。
あ、枕の下とかに忍ばせるのはどうだろうか。
うん、そうしよう。ここでいいだろう。
今度は室温が気になって、ウロウロし出した頃、遠慮深げな、小さなノックが聞こえる。
私は、部屋を駆け、ドアを開けに行く。薄手の夜着を纏った千色が、そこに、ポツンと立っていた。
過分に湯殿で清めたからなのだろう、身体を全体的に染めて、湯当たりしているようにも見える。
「あの・・・・・・僕・・・」
「いらっしゃい。待っていたよ。嫌じゃなければ、抱き上げてもいいかな」
こくんと小さな頭を縦に動かす。千色の身体は相変わらず軽いから、私の様に大して鍛えてもいない優男だって易々と抱き上げられてしまう。
きっと、寝台に誘ってもギクシャクとしてしまい、時がかかるだろうし、何よりも私が、もう待てない。
寝台に運び上げ、私と千色は、久方ぶりに、添うて横たわる。
「新さま。僕を本当に、そ、その・・・・・・」
「ちぃ。何を疑うの?私は、ちぃの恋人になりたいって言っているでしょう?
ちぃは私では嫌かな。時々ね、私は、お前の主人であることを厭うんだ、どうしてだと思う?」
不思議そうに私を見る、大きな瞳。
夢の様に綺麗だと、いつも思うんだよ、千色の瞳の光彩を。
世界中のどんなに希少な価値ある宝石だって敵わない煌めき。
私を虜にして離さない、お前の綺麗な心の現れでもあるんだよね。
ふと、阿川医師に聞いた話が脳裏を過る。私達に一番初めに手を差し伸べた佐倉医師のことだ。
佐倉医師の伴侶も、千色の様に小柄で、色素の薄い儚げな人なんだそうだ。
その瞳は、琥珀色なのだそうで、千色よりも更に、色味が薄いのだそうだ。
「彼は品のいい猫に見えるけど、千色くんは見えないね。
垂れ目なのもあって、ついつい、撫で回したくなっちゃう感じが、小さな仔犬って感じよね」
私は、この愛おしい生き物の生涯の主でありたいと思うが、それよりも。
今は、生涯の恋人であればいいだけだ。
余計な互いの肩書はすべてかなぐり捨てて、
私の全てでお前を愛してあげられるならば、それ以上望むものはない。
「私はね、お前のただの恋人がいいんだ。そして、いつか近い将来、この指に私の印をあげたい」
恭しく、千色の左手を掲げ、薬指に口付ける。
高校生のまだ未熟な私から、祖父が取上げなければと焦る理由はこれだろう。
私の想いは、もう、余所に行くことはない。
「・・・・・・いけ、ません。大旦那様にも井水の皆様にもご迷惑です、それは。
僕は、不完全な女なんです。もし、女を選ぶなら、覚悟をするように言われました」
「誰に?祖父にだろうね。そんなくだらないことを言うのは」
「大旦那様の仰ることは当然だと思いました。
女として、新さまの側に居るならば、許さない。財も才も無い上に真っ当な子も産めぬ。
そんな僕が、新さまを誘惑して、他に目を向けぬようになるなど、とんでもないことだと。
未来ある新さま御身の妨げになるならば、身を引いて当然で、
お家の為に、新さまのお側に居てはならないと、僕も、思ったから。
男の使用人として、新さまのお側で働いて行きたいんです、だからっ」
ほら、やっぱり。千色は既に、言い聞かされている。
そして、私の予測では、お前は、今日を限りに、私との関係を解消したがるんだろう?
「いいかい?私が欲しくて、それ以外なんか他の何もいらないものはね、千色しかいないよ」
私にだって、覚悟はあるんだからね。
「それに、千色は千色。男だろうと女だろうと、変わらないよ。
子供がなんだと言うのだ。そんなの私の代で井水は世襲を止めればいいだけのこと。
元から私は反対なのだ。そんな時代遅れなことをする必要性はないんだ。
いっそ、私も世襲しないと言う手もあるな、おお、それもいいな。
私は、どこか、そうだな、堅い所に職を得て、ちぃとここにずっと暮らそうか」
「僕の為に、お家までお捨てになるおつもりなのですか。恐れ多いことを・・・・・・」
ああ、また泣かせてしまう。
どうして、この子は、もっと我儘な恋人であってくれないのだろうか。
自己犠牲を何とも思わずにしてしまうんだろうか。
「逆に、聞こうか。ちぃは、私が要らない?」
「いいえ。ずっとお側に居たいです。だからっ」
「ならば、簡単なこと。このままでいなさい。私はお前を守る為ならこの重い枷にも耐えるよ。
ちぃを、不自由させない経済力のある身でよかったと、これだけは思っているのに。
それに、ちぃは、男の子でいたいのでしょう?女の子の部分もそのままでいたいのでしょう?
ならば、私に養われていて欲しいな。お前の為ならば、厄介ごとも仕方がないから勤められる」
千色の髪を撫でて、私はその秀でた額にかかるそれを除けて、キスをする。
「私に、プレゼントされているものでしょう、千色は、神様から。
そして、私も、お前に用意された、贈り物でありたいんだ、いけないかな?」
私は、思う。
この世に生まれ落ちて、巡りあう互いを神の祝福と思える存在こそ、宝なのだと。
「私達は、生涯かかっても探せぬ人も多い中、こんなに早く巡り会えたことを
恨むことなんてないんだよ。感謝だけしていればいいんだ、違うかな?」
いいかい、これは、私の裏表のない心からの想いだよ。
そう、瞳に念じて、涙に飾られながらも、開かれている双眸に語りかける。
「ずっと、一緒に、これからも生きて行こう。
お前が、今、誓えなくても、私は誓おう、千色を生んでくれた、お母様に、感謝して。
私に千色を会わせてくれてありがとう、必ず、幸せにします。とね」
この言葉が、千色を揺らさなければ、用意していた言葉がある。
お前は、自らを化物だと言うが。
知っているかい?天使って、どちらでもない存在なんだそうだよ。と。
そして、私はお前を、ずっと、天使だと思っていたし、これからも思っていくんだと。
お前の身体のことがわかって、ますます、哀れな私を救う為に降臨した御使いだと確信したんだ。
だが、これを今回は伝える必要が無かったようで。
千色はむしゃぶりつく様な熱いキスを私に返してくれた。
私達には、もう言葉など要らないと、言わんばかりに、性急で思いに溢れた唇を重ねてくれた。
私は、これ以上ない喜びに包まれ、千色を寝台に縫いとめたのに
まだ、諦め悪く、後悔なさりませんか?なんて小さな声で愚劣な質問をするので
耳に囁いてあげたんだ。少し意地悪にね。
「後悔するのは、ちぃ、でしょう?今夜は、一睡もさせないよ」
ただ、お前は、嬉しそうに抱き付いてくれたから、後悔じゃないってわかったけれどね。
明かりを一番弱くして、ずっと触れ合わせていたい唇を離してあげれば。
甘い吐息と艶声が、幾筋もの銀糸を縫って漏れている。
はくはくと苦しげな、空気を貪る表情に煽られる。
抱き合った時に触れた胸が感じたので知っていた、夜着の下には
今までの情交でついていたことのない、女性もののブラジャーがあって。
首筋に舌を這わせ、背が反る隙に、腕を回し、巧みに外す様に、千色が驚いた表情をする。
「ん?どうかした?」
「新さま。て、手慣れてませんか?僕、まだ慣れないから外すの下手くそなのに」
確かに、あまりブラ自体していないことは知っている。
今時の女性下着には、カップだけ着いたキャミソールもあるようで、
千色は専らそればかり使っていると、この間、あかねが私に注意するように言って来た。
胸の形が悪くなるのだそうだ。きちんと正しいサイズのブラジャーを着用しないと。
それを、私がどう、正させればいいのかもわからず放置してきたのを、思いだし、つい吹き出す。
「手慣れている私で、すまないね。でも、可愛いね、これをつけている千色は」
前釦を外して露わになる淡い水色のレースに飾られたそれ。
外れて緩んだ布地の隙間に覗いた柔らかそうな乳房。小ぶりで実に愛らしい。
「違う意味で言ったんです。上手だなって単純な感動でっ・・・・・・
それに、いいのです、僕だけじゃなくても。だって、僕はっ」
「健気なことを言わないの。最近はずっと禁欲していて、お前のだけを楽しみにしていたんだから」
上衣を開け、ブラを取り去り。全てを剥いてしまおうと下衣に手をかける。
ズボンを脚から抜き、露わになる下着、所謂パンツ。それもまた、以前と変化していた。
ボクサー型なのに、レースやリボンが付いていて、且つ窓もない。
「もしかして、上のお揃い?」
「さ、小百合さんが、こういう時に、ばらばらのを着てちゃ、ダメだって・・・・・・」
不安そうで涙目になってて。
あまりの可愛らしい心配事をしてる千色が堪らなく愛らしくて。
きゅーっと、そのまま抱きしめてみた。
「新さま、ボタンが痛いです・・・・・・」
「あ、つい夢中で、ちぃばかり脱がせていたね。私もいいかい?」
こくんと、熱っぽい眼で私を見つめる。
「あの・・・お手伝いしてもいいですか?」
是非もない。私は千色の手を、上衣の釦まで導いてあげた。
指先が震えるのに、それは丁寧に、私の夜着を脱がせてくれる。
その間、私は、また、千色の唇を愛した。妨げにならぬ程度に、愛を囁くが如く。
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