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”-1~+1” 王子の最愛の人々 ‐1
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side 爽
「なんでも、思い通りにしてしまった。とうとう」
親父から感慨深げな吐息と共に、開口一番飛び出した言葉。
こふっ こふっ
可愛らしい咳をする、俺の奥さん。
旧姓、丹羽(にわ)、
現在、佐倉 健(さくら たける)。
れっきとした男子だけど、俺の愛猫で愛妻。
ゲイの俺を、生涯の伴侶に選んでくれて、佐倉の姓を一緒に名乗らせてくれた大切な大切な人。
ああ、喉が乾いてるんだなって、思う。
追想に浸っていた俺の脳裏をそんな小さな音で引き戻して、
きゅっと掌の中の、濃紺の壺を抱きしめる。
「ごめんね、気付かなくて。暖房で喉渇いちゃったね。次のSA寄るから待ってて?」
返事は・・・・・・動作でも、返ることが、ない。
めっきり口数が少なくどころか、一番近い記憶で健が声を出したのを、思い出すのが、しんどいほど振り返らなくちゃならない。
「トイレ休憩もしようか?名物のコーヒー牛乳も飲もうね。しばらく飲めなくなるし。健、好きだよね?」
独り言キングだよなと、最近の俺を、我ながら思う。
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