アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
”-1~+1” 王子の最愛の人々 ‐9
-
◇◇◇◇◇
葬儀や手続きの一切が終わり、東京に帰る。
ほとんど食事も取らなくなった健が不憫で、ゆっくりのんびり無理せずに連れて帰りたいから
わざわざ、中井に東京から車を運んでもらって。
帰る前に、お骨は佐倉の家に置いて行かなきゃならないって説得しても、健はダメで。
辰三さんが、禰宜様の言うことならば聞いてくれるかもと、連れて来てくれた。
「普段はいたしませんが、仏式のように分骨をしましょうか?何か入れ物はありませんか?」
お骨を分けて入れるものなんて、思いつかなくて、バタバタ俺達が探し回っていると
玄関に置かれている固定電話が鳴った。
佐倉の家の固定電話を使う人は、静さんに用事がある人以外いない筈で。
俺は、辰三さんと顔を見合わせ、長く呼び出し音が鳴っているし、一応、出てみることにした。
「あ、あの!私、ノダミナって言います。この、たびは・・・えっと・・・」
「もしかして、葬儀に来てくれた高校生の子?」
「はい!そうです!!」
家の母校の制服を着て現れた、髪の長いいまどき風の女の子。
辰三さんに訊いたら、知らんが、カルチャーとかの生徒じゃないかといってた娘。
ん?ノダ、ミナって言ったか?
「もしかして、お姉さんは、野田花菜さん?」
「はい!そうです!あの、今、神社で、お骨ここに無いって聞いて。もし無いならって、静さんから預かってるもの届けなきゃいけないんです。約束してて!!えっと、あの・・・」
このテンションの高さと話し方にDNAを感じた。
野田は、俺達の高校の同級生で、同じ大学の薬学部に通う、いつの間にか友人になってた女子。
の・・・妹が何の用で、しかも静さんから何かを預かるほど仲がいいんだ?
「私、すぐに行きますから!自転車取ってきて、飛ばして!」
「いや・・・取りに行くか、もしくは迎えに行く。時間ないんで」
あそこから自転車なんて1時間以上かかるってば。
禰宜様が、健に話をしたいと言うので、お任せして、辰三さんと一緒に出かけた。
少女は、また制服で、神社の鳥居前で待ってた。
彼女の預かっていたものは、藍色の磁器の小さな蓋つきの壷。
「納骨されてるかどうか確認して、されてたら、私にくれるって。
されてなかったら、私の孫に届けてあげてって言われてたんです」
彼女は、静さん曰く、最後に出来た、後輩のお友達なんだと
俺達に自己紹介してくれた。
辰三さんは嬉しそうに
「また、静さんは、思い出を語り合う、大事な友達をこさえてくれよったんなァ~」
と、笑いながら、ボロボロ、既に泣き腫らした瞼に新たな涙を溢す少女の頭を撫でた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
18 / 337