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”-1~+1” 王子の最愛の人々 ‐11
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まず、健は、何にもしなくなった。
下手に祭壇を作ったがためなのか、その場所に、遺骨を置かなくてはと思うけれど、
離れたくないから、首から提げたポーチを棚に載せて、そのままずっとそこに座っている。
動こうとするのは、トイレの用事だけ。その時も、離れたくないからかもじもじする。
見ていてあげて、すかさず、
「トイレの間、俺が預かるから、行っておいで」と、声がけしてやり、やっと腰を上げる。
そんな感じだから、日常生活は崩壊してて、
潔癖症に近いくらい神経質で、風呂の後じゃないと、エッチもさせない健が
放って置けば、風呂も入らないし、洗顔も歯磨きもしないし。
寝るのも、その場所で蹲って寝たがるし。
静さんのお骨入りポーチをちょっと取り上げ、釣って、俺の望みの場所へ移動させ
やっと人間らしい生活を送らさせている。
持って行ってかまわんし、もともとあんた達に宛てたもんだからと
辰三さんからもらってきた、静さんのエンディングノートを、ぱらぱら捲り
健を元に戻す、なにかヒントはないかと見てみる日々。
元々、朝に弱い健との同棲条件だった朝食当番しかしてない
朝食しかちゃんと作れてない俺は、毎日の健の食事の世話もする。
(まあ、ほとんど食べてくれないけどな)
帰ってすぐに、直面したことは、糠床の消失のピンチで。
静さんから分けてもらって、健がずっと世話してくれてた糠床が
冷蔵庫には避難してあったものの、水っぽくなってて、ちょっとヤバイ臭いがしてた。
正気に戻った健が、これをダメにしてたってなった時に
また落ち込まれちゃうだろうと、
大至急、俺の腐れ縁の悪友で同じマンションの階下に住んでる圭介を呼び出して、
俺達の近所の顔馴染みな商店街の古老達に預け、復活させてもらった。
それ以降、古老達の指示通り、慣れないながら、手入れをしてみたり。
スマホで料理サイトを覗いて、試行錯誤して。
洗濯機を回して、掃除機をかけて。
出来ないなりに精一杯、家事をこなしてみたりする。
静さんの入ってるポーチを引っ張って、
首を横に振り、行きたがらない健を無理やり
商店街に買い物と散歩がてら、つき合わせたり。
東京では帰ったら、ちょうどソメイヨシノが満開で。
桜はいくらでも開いて、健を誘うのに、健の目には何にも映ってないようだった。
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