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”-1~+1” 王子の最愛の人々 ‐12
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◇◇◇◇◇
圭介が、健の好物のゼリーを買って差し入れてくれた、3月最後の前日。
時々、奴は、こんな感じで、俺達を心配して顔を出してくれている。
健に、独りで食べれるかと問えば、頷いたので
静さんの分のお供えと、健の分を二つ、手渡した。
「どうすんの。あれ。4月から学校行けんの?」
「喪失感がさ、どうしようもないんだろうな、健の中でさ」
「飯とか、食ってるの?」
「朝と昼の合同のは、何とか最近、完食してくれるようになった」
日付感覚が狂ってるらしい健は、いまいち夜なのか朝なのかわかっていないっぽい。
ちゃんと、日の光もいっぱい入る部屋なんだけどね、俺の家。
「あのさ、花見とかどうかな?健くんとさ、静さんを連れて行こうって言ってさ」
「お前も一緒に行く?」
「いあ、今日は・・・・・・ちょっとさ」
口篭る圭介を見て、あ~って思い出す。
今日はこいつの年上の恋人の誕生日だった。
自分が辛いからって、他人まで道連れにするわけにはいかないってな。
「確か、大学病院の構内、今日までだったろ、ライトアップ」
「あ~そうなんだ。混むかな?」
「もう、結構散れちゃったから、空いてたよ、昨日とかは」
「昨日、羽瑠とお忍びデートしちゃったんだ。 な、心配してた?」
ぐっと、ゼリーを詰まらす、逆に器用な圭介を半笑いで見る。
圭介の恋人は、健の義兄で、トップモデルで俳優をしている奴だ。
丹羽家からも、弔問したい旨の、打診はあったが、
静さんがあまり喜ばないと思って、気持ちだけにしてもらった。
丹羽の義父は、静さんの一人娘、郁子(かおるこ)さんを乱暴した果てに
健を身ごもらせてしまったなんて間柄で、静さんからずっと憎まれていた。
俺達の結婚に当たる、養子の書類のサインをした式で
なんとなくいい雰囲気にはなったが、
それは静さんに丹羽さんが会った最後の日の出来事で
痼りが溶けきったようではなかったから。
ただ、丹羽の義父は、静さんの病気のことも、先が長くないことも知らされており、
健が、静さんの元に行かないように、共謀して
長い休み中、旅行に連れ出したりしていたことを、圭介を介して、教えられた。
健の様子を、あちらも、羽瑠を介して、知っただろうと思うと。
悠長に自然に治るのを待ってとは、そろそろ言えないかもしれない。
丹羽の義父は、それはそれは、健を溺愛しているし、義兄達に至っては・・・もっと厄介だ。
上二人の芸能活動をする兄達はもちろん、健を凄く大事にしているし。
既に引退した、モデルで人気バンドのベーシストだった、三番目の兄は
健が亡くした中学時代の少しの間、恋人だったらしい、男だ。
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