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”-1~+1” 王子の最愛の人々 ‐25
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昨晩が、軽めにいたしたお陰なのか、健は低血圧の朝が弱いタイプだけど、
朝食と昼用の弁当とを、二人して、いちゃつきながら作れて。
視界に紛れる、静さんのお骨壷を見てしまうと、しゅんとする健の髪を撫でつつ
朝食や準備をあたふた済ませて。
「今日から、また、しよ?」
って、可愛らしく照れながら、二人で並んで立つ玄関で囁かれ。
久しぶりに、行って来ます行ってらっしゃいのキスをする。
一月で、戻れるとは夢にも思わなかった、幸せな朝。
当り前に、これから毎日、続くと信じていた朝。
一日の授業が終わり、仲間内とも呼べる、仲のいい友人達、
横山と井田の漫才みたいな同性カップルと、
健に幼稚園時代から片思いの筋金女、見た目はクールビューティー
中身は小うるさい乙女の背のデカい、小田桔乃(きつの)、
小田と親友で、見た目はチビでほんわか和み系なのに、
けっこう気風のいい江戸前女、阿川友香(ゆうか)と。
健の痩せ窶れを気にしながらも、いつも通りの日常を演出してくれてるなって
密かに感謝しながら、俺達はわいわい喋って。
「健く~ん、お客さ~ん」
俺達の期は、通常、男女比が7:3、下手すりゃ8:2って医学部の顔ぶれが
異例の6:4で。先輩方も、ハーレムって呼んでるくらい女子が結構多い。
その女子達から、見目麗しい容姿と可愛らしい体型と気質で
絶大な人気を誇る健は、単品でも声がかかりやすく。
俺としては、結構気が気じゃないんだ。(だって、心はノンケくんだからね?)
で、健より目敏く、そちらを眺めて見れば、あ~やっぱり来たのかって奴がひらひら手を振ってる。
呼び出してくれた女子も頬を染めるくらい、涼やかな和風イケメンが爽やかに居やがる。
「あ、留華くん!ごめん、ちょっと行ってくるね」
俺達の1コ下、同じ医学部に進学しやがった、橘留華(たちばな るか)。
中学の頃から、1コ上の健ことが好きだったらしく、健が大学1年で再会して以来、
ものすごくマメに健にモーションをかけてきやがる困った奴。
健に、中学の時も、大学1年の時も、しっかり振られているというのに。
梨園のお嬢様で宝塚トップスターだった美人女優の血を引いた顔に細身だけどタッパもある。
まあ、健を追いかけて、医学部に進めるだけの頭はあったんだから賢いんだろうけど
同じくエスカレータ進学組で、顔見知りだった井田が言うには、
昔から男女ともにモテていたらしい、気障眼鏡男。
俺が敵視してるって健は知ってるけど、自分が忘れてしまった中学時代に
仲良くしていたんだって負い目からなのか、すっぱり振っても邪険に出来ず。
健は友人として、留華はまだまだ諦めずに想いを寄せてて、時々連絡を取ってる。
「本調子じゃないんだから、早く戻っておいでね?」
「同じ学舎に移れて嬉しいからって、挨拶に来ただけだよ。すぐ、戻るから、ね?」
「うん、待ってる、買い物してくよ?パン切らしてるんだからね」
はいはいって苦笑して、小走りで出て行く背中。
俺達のやり取りを、新婚っぽすぎるとからかったり、僻んだりする、賑やかな友人達。
戻って行く、日常を、俺はこのときまで、愛しいなんても思わずに過ごしてた。
どこからか、女子の悲鳴が校舎に響き渡って。
「中舟生!丹羽がっ!!」
つい、さっき、「お前ら、二人で佐倉になって何て呼べばいいか悩むぞ」笑ってたクラスの奴が
慌てて、怒鳴って、教室に飛び込んでくる、その時まで。
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