アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
”3” 王子、悔恨に呻く ‐3
-
一頻り、ベンチや、壁や、そこらに、八つ当たって。
これ以上、壊されては、後でヤバイと、思った横山と
戻って来た、阿川と小田に、動きを阻まれ。
井田が俺を怖がり啜り泣き出す声に、やっと正気に戻る。
「さっきね、警察の人が来てるって、教授が言ってたの。
私や中舟生くんにも、知ってる範囲でいいから話を聞きたいって申し入れがあったみたい。
どうする?隣の家族待合室、空けて、待っててくれるって言ってたけど」
正直、俺は、頭の中が真っ白で、必死に処置をしてた、しか覚えておらず。
警察に、訊いてもらったところで、真っ当なことを説明出来るとは思えない。
これは、阿川だって、同じだろうし、
連絡に走り回った、井田も小田も、役不足。
唯一、アイツを囲んだ、腕に自身ありメンバーに途中まで居て、
担架運搬要員に借り出されて、急ぎ、その場を離れた横山は、何かを知っているのかもしれない。
「あの場に居た生徒は、ほとんど調書を済ませたらしいから、
私達の知り得ないことも、警察は、大凡、知ってるんじゃないかって、先生も言ってた」
アイツが何者で、何故、健を刺殺しようとしたのか。
それが分かるのかも知れないと、阿川が言ってるのは分かる。
分かるが・・・今は、そんなことより
健が死んでしまわないように、全ての神様や仏様やご先祖様に頼んでることの方が
俺には大切に思える。
「ここを交代で見ておくことにして、受けて来よう、事情聴取。
の、前に、お前は着替えに行かないといけないけどな。ほれ」
横山に半ば無理やり引きずられ、普段ならば、お前と手なんか腐るから繋がん!と
言いきられそうな奴に、腕を掴まれ、部室に連行され、俺は、シャワーと、着替えをする。
排水溝に、渦を巻いて、健の固まった血が溶けて朱の線を引いて流れて行く。
水溜りに手を伸ばして、訳もなく、撫でていると、
俺に打ち付けてくる水量の中で、号泣している、俺に、俺自身、驚く。
嫌だ・・・嫌だよ。
健まで、俺を置いて行ってしまうなんて、そんなの酷い。
静さん、連れて行かないで・・・。
お願いだから、俺はあなたとの誓いを、絶対に守るんだから。
健を護れなかったくせに、俺は、静さんに恨み言を言いながら、願った。
俺の嗚咽が漏れていたんだろう、シャワーブースの外で、横山が
「気持ちはわかるから、さっさと済ませて、健くんのところに戻るぞ」と
声をかけてくれなかったら、きっと、この水の中で、
中にあった備品らしきガラスの容器を叩き割り、己に向けていたと思う。
健が居ない世は、闇だ。
それだけは、間違いなく、わかるんだ・・・。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
40 / 337