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”5” 王子と眠り猫 ‐12
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百哉は幼稚園から、弟の柳は、小学校から、俺の行ってる大学に通ってた内部組。
「でも、爽くんと健くんって外部組で医学部なんでしょう?
しかもけっこう成績いいみたいじゃない?すごいよね。ボクなんか、医学部行きたかったから
頑張って勉強してるつもりなのに、甘い学内推薦でも圏外だった。
なにか、実家の役に立とうって、看護学部に進んだけど、下から数えるレベルだったし。
京はさ、本当に頭もいいんだ。ちゃんと父が望む推薦貰って、医学部に入ったし。
だって、ボクは「百」で、京は「京」だよ?ボク等の名前って数の単位なんだ。
ボクにつけたときは、「一を聞いて百を知れ」って意味で。
でも、小さいころ既に、大したことないってわかっちゃったら、恵子さんに赤ちゃんが生まれて
その子を認知するって言った父は、「百哉が百であの程度だから、大きい単位をつけよう」って。
兆の一万倍、10の16乗。10の2乗と比べてみてよ」
柳は、同じ内部組の、井田に言わせると、すごく遊んでる子で、少しお金に汚い子。
でも、容姿が整っているから、かなり傲慢だけど、人気はあるんだよって。
どっちもありな、リバで、男の恋人ってのが、高校時代、コロコロと変わってはいて。
校内でも、キスしてたとか、エッチしてたとか、噂の絶えない奴だったそうだ。
かなりの面食いで、付き合う基準が、「顔」と「お財布の中身」って言い切るくらい。
俺は、健一筋だったし、柳程度の容姿で、自惚れるなよって感じで、相手にもしてなかった。
まあ、この病院を見ればわかるが、正直、私立に幼い頃から兄弟で学ばせるには
困窮してたと思う、表面上は取り繕ってても。
施設は老朽化。医師も看護士も他のスタッフも規模からすればギリギリだし。
大学病院の系列だってだけで、なんとかやりくりしてる。
暇な老人や一般人の仕事に忙しい人が軽い病気で、急いでかかりたい時だけに利用、
みたいな、けっこう、いつ潰れても、納得できそうな所。
柳のような、経営者の方が、きっと、こんな病院を立て直すだろう。
「京が、高校に入った年、ボクが、家を出なきゃ、兄弟の縁を切るって。
持ってたもの、全部、燃やされた。どうせ、出てって無駄だし荷物になるだろうって。
ずっと、穢れてて汚いんだから、護摩炊きみたいにしたら綺麗になるって。
どうして、そんなに嫌われるんだろうって、大学生のボクは泣いたけど。
自分の叔父さんのチンポをうっとり舐めて、身体中に噛み痕つけて裸だったり。
自分にもやれって命じれば、ホイホイ何でもするし、チンポ踏まれてもイクし。
気持ち悪いよな、考えれば考えるほど、こんな兄貴、嫌かなって思ったら途中から笑えた」
ゲイなんて、生きやすいもんじゃない。
わかってるし、実際、健も巻き込んじゃった俺は、全力で愛する人を守るって、
そういう大切な人がいて、思いあっていられる稀有な幸せ者な自分を自覚してきた。
でも、こんな風に、百哉や、恭介みたいな思いをして
ゲイであって、苦しい思いをし続ける人っていっぱいいる。
俺も、もしかしなくても、こんなに重い関係はならないだろうけど
快楽と精神の充足は、相成り立たないと、諦めて生きてくつもりでいたんだ。
映画の大詰めの辺り、急に、ヘッドフォンを出して来た、百哉に被せられ。
「ボク、このラスト、どうしてもダメ。すごく泣いちゃうから、一人で見て」
モジュラージャックに繋がれて、両耳を最大音量で、塞がれた。
確かに、泣ける。痛いくらいに泣ける。
でも、見てて、柳が嫌う理由もわかる。
柳は、作品の中の、非常時にありえない能天気さが、嫌なんだろう。
設定上、周囲を、ただの風景のように流している、リアリズム不足さが腹立たしいんだろう。
ホロコーストだぞ、虐殺されてるんだぞ、周りの人達は。
笑いごとじゃないし、実際、出来っこないだろう、こんなストーリー。
でも、それを設定に使ってるから、これは切り口が面白いし、泣けるんじゃないかな。
だって主人公、イタリア人だし、いそうじゃん、こんな適当なオジサン。
エンドロールが流れる頃、戻った百哉は、ケツの下まで覆うTシャツ一枚で現れた。
俺を背後から抱きしめ、ヘッドフォンを外して囁く。
「支度、済ませて来たから。好きにして?」
唯一の家具だと、笑って、ここに着いて、がらんどうのフローリングにカーテンのみな
部屋に入って立ち尽くす俺に、これに座っててと、敷いてくれた煎餅布団。
その上に座ってた俺は、どう考えても、ヤル前提でここにいるみたいで。
「ボク達に、今夜、必要なのは、お互いを介護することじゃない?ね、爽くん」
「・・・・・・爽くんって、呼ぶな」
「ごめん。もう、名前、呼ばないね」
前に回り込んだ、百哉は俺に跨ってくる。
仕掛けてくるキス。
顔を背ける俺。
「キスは、嫌?」
「キスも、嫌。誰とも、もう、しない。俺は、健のもんだから」
「・・・・・・うん。わかった。じゃあ、ボクにご奉仕させて下さい」
俺の服の釦に、手をかける。
今日は、5月に入ったばかりなのに、やたらと暑かった。
けっこう汗をかいたのに、風呂にも入ってない俺を、脱がせながら、唇と舌で丁寧な愛撫をする。
映画を見るために、落としていた照明の下、時折、轟音と震動をあげる電車が通り過ぎる
光が明滅する程度の光源で、闇に目が慣れた俺の身体を這うのは、
ぎこちなく動く、うっとりするほど綺麗な桃色の物じゃなく、炎を思わせる赤い色。
それでも、俺の飢えた身体は反応して行く。
あいにく、俺は性感が薄い乳首をしつこく攻めてる、手慣れた手管。
でも、健の癖のようになってる、胸元に頬を摺り寄られるのには弱い。
回して抱いてしまう、頭のサイズや髪質の違い。
その度に、こいつは健じゃないんだって、気を咎めながら、興奮して行く。
テクニックが、かなり高い百哉。
多分、たくさんの男を知ってる。
大概の男が感じるスポットを、やわやわ攻めて、感じてないと気付けば、直様手段を変える。
俺の弱い脇腹のラインを淫靡に撫でられ、声が漏れる。
追いかけるのはあの緋色の舌。闇に白い歯が漏れ見えて、所々、甘噛みをする。
デニムに手がかかり、釦とファスナーを下されば、愚息は悲しいかな、元気よく飛び出して。
「服のサイズ、ボクと合わないから、脱がせちゃうね。着替え貸してあげられないし」
下肢を覆う衣服も、すべて、脱がされた。
素足になって、跨られてる百哉が、下着もないことに気づき。
百哉の先走りで腿が濡れだすのがわかる。
「モモ、上、脱いで」
「・・・・・・ダメ。一昨日、三橋さんとしたから、身体見せられない」
さっきから、薄いTシャツの胸元が、押し上げられてて、
弄って欲しそうに主張してるのに。
勝手に、脱がそうとすると、ちょっと抵抗されて、面倒だと思いつつ、たくしあげる。
・・・・・・なんだ、これ。
噛み痕だけじゃない。多分、鞭とか人工的なので付けられてる傷。
まだ瘡蓋だったりしてるのから、古くて残ってしまってて色素沈着してるのまで。
よく見れば、丸い、火傷の痕もある。これって煙草だよな・・・。
SM好きな、昔のセフレの奴の身体は確かにこんな感じだったけど。
消えないような傷つくられたりは、無かった。
「嫌な気分になるよね、普通のしかしない人には、さ」
「・・・嫌とかじゃない。気にしなくて、いいから。・・・脱がすな?」
噛み痕だって、こんなにじゃ、されたら、快感より、痛いんじゃないか?純粋に。
痛めつける奴って、こんなにするもんなのか?
だってさ、瘡蓋が歯形の上にあるって、噛んで血が出るほどやってるってことじゃん?
「モモ、こいつと別れた方がよくない?」
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