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”9” ネコに、再び見(まみ)える王子 ‐2
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前に、風邪を引いた健に、羽瑠が差し入れてくれたゼリー。
あれが、良いって思った。即、圭介に連絡取って、店の名前を聞いて買いに走った。
前に、買ってもらったのは、防腐剤なしのだったから傷むってことも考えて、普通のを。
ちょっと日持ちして、健が食べたい時に食べれないと困るし。
それと、筆記具。
一々、充電器のある看護婦の詰所にタブレット取りに行くの面倒で。
タブレットとかもいいけど、健の字は綺麗で、万年筆のインクの滲んだ筆致とか
そりゃもう、書いた字まで、綺麗なんだなって、うっとりするんだ。
表紙がしっかりしてる小さいメモ帳と、うん、やっぱり万年筆にしよう。
本当は、健、ちゃんとした1本を持っている。お母さんの形見。
紫檀の軸に、螺鈿と象牙で萩の花が描かれている。
お祖父さん、静さんの旦那様が、娘の進学祝いに、特別に誂えたものだ。
大学の入学式の時に、丹羽さんが、静さんから隠してこっそり持っていて
傷んでた部分を直して、健にプレゼントされたらしい。
俺も、健に、結婚の指輪のお返しにって、名入万年筆を贈られてる。
一緒に買いに行ったんだ、銀座の専門店に。もちろん、しまい込まなきゃならないから
持ってはいられないんだけど、思い出の品過ぎるからね。
あ~ダメダメ、感傷に浸ってる場合じゃない。
急いで買いものして帰らないといけないんだ。小田と阿川が来てしまう。
発作を起こして、意識を失った健も、やっぱり気になるし。
いくら、看護のプロな百哉が見ててくれるって言っても、一番の気がかり。
どうせだ、俺も、あっちは暫く持てないし、慣れたいから、万年筆、色違いの軸で買っちゃおう。
健には、黒地に青いラインがアクセントの軸を。俺は、赤のアクセントのを。
健の好きな色は、深い青。昔から青が好きなのかな。
走り梅雨っぽくて、数日雨が多い。
せっかく、5月の爽やかな時期なのに、なんだか気が滅入りやすい。
今は、雨が上がったばかりで、まだ空はぐずついている。
もうすぐ、5月が終わろうとしてる、健の来月の誕生日までには、退院させてやりたいな。
急いでした買物の甲斐なく、夕刻になっても、健は目覚めず。
せっかく来てもらった二人に悪いから、夕食を奢って、送ってった。
帰り際、まだ、指輪をしてる左手で健の髪を撫でて来た。
明日。ちゃんと、会おうね。
中学の記憶しかない、・・・俺を知らない、健くん。
◇◇◇◇◇
百哉は、悪くない、今回は。
告げ口は、疑ったが、断じてしていないそうだ。
小田と阿川と連立って、本日の最終講義が終わり次第、駆けつけたら。
柳心療内科の玄関で、鷲尾医師が仁王立ちしていた。
「佐倉くん。何をする気で来たんでしょうか?ご説明願えますか?」
本日の障壁、コイツか。コイツなのか・・・。クソっ、手強い。
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