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”9” ネコに、再び見(まみ)える王子 ‐6
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「爽には、申し訳なく思うけど、オレも、それがいい打開策だって思うよ。
何か、策にはなんなくても、中学生の健くんの、一番近くにいた存在は、彼でしょ?」
芙柚・・・・・か。
ダメだ、嫌だ、アイツに渡したくない。
俺は、我知らず、ぶんぶん頭を振ってる。パンクロッカーかっての。
「別に、話して委ねろなんて、私達は言っていないぞ?参考意見を聞けって・・・」
「創さん、もう、よしましょ。一番、わかってんの、コイツですよ。
でも、助けてって言えない、無駄なプライド捨てらんないの、わかるんですよ。
オレも経験者なんで、えへへ。オレの好きな人も、芙柚くん絡みでけっこうあったんっす」
あ~、まあ、してたみたいだ、あそこは兄弟で。
圭介のハニーは元々、かなりな淫乱ビッチだし。
ふと、健って、芙柚と羽瑠が出来てんのは知ってたのかなって気になる。
仮にも恋人が、腹違いの実の兄と性的関係にありましたなんて知ったら、普通なら卒倒ものだろう。
「圭介は付き合ってる人がいるのか。山瀬の親御さんに・・・」
「報告はしないし、多分できないですね。男で年上で有名人ですから。
あ、創さん、これは、内密に願います、家の親には。兄弟そろってゲイとか倒れられちゃうんで」
親父が、唖然と口を開く。圭介の実家、山瀬家も2人兄弟だ。歳の離れた妹が下にいるが。
恭介は、俺とHをしていた現場を、この目の前の親父と、外面が何より大事な母親に見つかって
医学部を中退させられ、今は、ゲイの恋人と別の町で暮らしてるって聞いた。
「・・・・・・子育ては、難しいものだな」
それを、息子の前で言うか?クソ親父。
「まあ、こうなれば、丹羽家に帰らざるを得ないよね。どのみち、芙柚くん出てくるでしょ。
今、話して、釘を刺すか、後から現れられて全部持ってかれるかのどっちかなら、
自ずと、選ぶのって決まるように思うけどね~」
クソ圭介・・・。痛いところを突きやがる。
「今晩、します」
奥歯を噛みしめて、忌々しげに言ったら、二人に大爆笑された。
「私にも、細やかだが策はある。これもお前が頼まないと厳しいだろうが、こっちは最終手段にしよう」
「どんな、です・・・?まさか、田舎の家の病院に・・・」
「だったら、お前、また、暴れるだろう、駄々捏ねて」
うっ・・・腹が立つが、言いえて妙だ。
親父が、水っぽい含んだ笑い声で話しかけて、少し噎せた。
「んっ。 どのみち、方向性を決めろ。来週の今日はもう6月だ。
来月分までは先払いで部屋の金は払ってある。が、7月はまだだ。言ってる意味はわかるな?」
「部屋は、片付け終わったんだろ?挫けてる場合か?おい。
凹んで、悩んでもやついてんなら、オレも信太郎も組手、付き合ってやれるぞ?」
最近。商店街に買出しにも行ってない。
スーパーに閉店間際に飛び込んで、適当な物を少し買うだけだ、買い物も楽しくないし。
もちろん、道場にも行けてない。そうだな、身体を痛めつけたら、少しすっきりするかもな。
「午後、行ってくるかな。モヤモヤ飛ばしに」
「そうだな。方向性を変えるには、良いリフレッシュだろう。ならば、食うぞ」
親父に、俺のだけは、玉が多めな、鮨折を突き出された。
腹が減っては何とやら、だ。うん。
「午後、オレ、ガールズ達と、お見舞い行ってくる。信太郎呼ぶか?」
「いいや。形をやる。その方が雑念、飛ぶし」
「そっか」って、圭介は呟いて、ご飯粒が喉に刺さりそうになったのを
ペットのお茶を冷蔵庫からセルフで追加し、更に開けて
三人で黙々と、自分の分の折を食った。
終わり頃思いついて、圭介に頼む。
「何か、軽くて、日持ちして食べやすい奴、買ってってやって」
「ゼリー以外?」
「ああ、あれは暫く分、入れてあるからな」
「だったらさ、お前が、何か作っててやれば?喜びそうなの、スープとか」
はいはい。会いに行かずに済ますなって事だろ?
わかったよ、しっかり、しゃっきりして来てやるよ。
◇◇◇◇◇
芙柚とは、話が出来ないまま、週末が終わり。
日参して、俺は、健にスープジャーを届けている。
意外や意外、御口に合うようで、毎回、前回分が空になって、ちゃんと洗って返してくれる。
今夜はじゃが芋のポタージュにしてみた。このレシピは健に習ったんだ。
夕刻、顔を出したら起きていて。
今日から、俺だけで来ても大丈夫か?と昨晩訊いて、頷かれたけど
心配して、百哉も一緒に行こうかと言ってたが、断った手前、ど緊張してるが行くしかない。
入る前に、戸を軽くノックして、声をかけようとしたら、
慌てて、健が何かを布団の中に隠した。
きょろきょろと辺りを見回して、戸口の俺が手を振ってるのを見つけて、かあっと赤面する。
「こんばんは。どうしたの?」
首をぶんぶん振って、その慌て振りが可愛くて、思わず笑みが漏れる。
あ、いかん。
ほらな、キッと睨まれた。
「ごめん、君を笑ったんじゃないんだ。どうする?タブレット借りてくる?」
首を横に振って、パク、パク。
こら、俺は読話出来ないんだって、言いたいことは判ったけど。
袖机のメモを取ってあげた。と、健が何かを指差してる?
あ~昨日のスープジャーかな、きっと。
「昨夜のは気に入った?久しぶりだったでしょ?ちょっと辛いの」
昨晩のは豆乳カレースープにしてみた。静さんの料理メモにあったやつ。
野菜が何種類もたっぷり入ってて、カレー粉が入る。
その野菜を求めて、久しぶりに商店街に顔を出したから、
色々訊きたがる皆から俺をブロックしてくれた信太郎からの差し入れで
鮪の切り落としを安くしてもらったんで、それとアボガドのサラダも持って来た。
スープは死守したが、サラダの方は、一緒に来た女どもに珍しがられ奪われて
健は一口しか食えなかったんだけどね。
『美味しかった。お祖母ちゃんの味でした。習ったんですか?』
「いや、習ってないよ。料理メモがあるんだ、お手製の。
ちゃんと、イラスト入りで、最近、開いてみてビックリ、俺でも作れるのが載ってた」
にこっと、健が笑う。華がある微笑。
前の健は、滅多にしなかった、自分の容姿が優れていることを自覚している笑い方。
タイプとしては、俺の「王子様風笑顔」って、健が命名した、薄っぺらい少々傲慢な笑顔だ。
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