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”11” 別居を決意する王子 ‐1
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side 爽
う~~う~。何、故、出、な、いんだ~!あの偏屈男めっ。
俺は、ここ一週間以上、電話をしているが、丹羽芙柚は、全く電話に出ない。
訊きたいことがある、話がある、って、
メールもLINEもSMSも、総動員で、奴にメッセージを送っているが、完全無視。
誰がかけてもこうなのか、試しに、義父の丹羽さんに探りを入れたが、誰のアクセスにも答えてないようだ。
夏さんなんか、らしくもなく、勤め先に電話までしてみたらしい。
「きちんと毎日、無遅刻無欠勤で、真面目に働いています」って事務の方は言うし
折り返し連絡を寄越すように伝言を頼むそうなんだが、かかって来たことはないって。
居候先の家具工房にも連絡をしたが、奥さんは伝言してくれているようだが、やっぱり、話せてない。
くらぁ~!やっとの思いで、電話してんだぞ、こっちは!!
色んな、もやもや、耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍んじゃってんだ、くっそ~
「どうだ、首尾は?」
「全く、ダメです。アイツ、完全に出る気ないと思います」
健の病院の帰路の車で走行中、親父から着信があって、帰宅次第折り返したら、開口一番、これ。
親父のアドバイス通り、健のこれからの待遇を、どうしていけばいいか参考意見だけでも、
いや、そこまでは望んでない、中学生時代の健について、どんな子だったのか教えてくれればいい。
橘兄弟には、訊いてみた、でも、大した収穫はなかった。
・・・・・・なんか、アイツらは、訊かれると、痛い、みたいで。
何にも知らなくて、中学時代の健を救えなかった思いと、それのせいで今回刺されて
しかも、西郷を連れて行っちゃったのが、留華だったってのが、ね。
思い出を語らせると、なんかどんどん真っ暗な雰囲気になってしまって、さ。
留華なんか、大学と家の往復のみな、すっかり、地味な学生生活になっちゃったそうだ。
サークルも派手なの掛け持ちして、友達もたくさんなアイツが、そんなになって
浹さんも、心配しているらしい。ま、幸いなるかなPTSDは大丈夫だっだようだけど。
「ふう、丹羽芙柚の線は、あてに出来ないか。あれから、退院後の件、健くんと話せたのか?」
「・・・・・・すみません。その話題には、触れれてません」
「酷な様だが、明日は、もう・・・」
「わ、わかってます、6月です、わかってるんです。ただ、けっこう最近雰囲気が良くなって来てて
少しでも、心の距離を近付けたいとか、つい、思ってしまって、ですね」
俺のしどろもどろな言い訳に、親父は深い溜息で答える。
なんだよ!19日の誕生日までには、退院させてやりたいって、言い出しっぺは俺だよ、自覚あるってば!
起きていられる時間も、何かに熱中していれば、かなり長い時間を、健は記録更新してる。
お絵かきに続いて、お勧めの文庫本も数冊、俺と阿川で選書したのを渡した。
『字を読むのは、ずっとだと、ちょっとキツイかな。でも少しずつ、面白いから読んでます。
佐倉さんの選んだのと、阿川さんが選んだので、タイプが違って興味深いです』
斜め読みして、翌日に、顔を出したら、そう書いて見せてくれた。
小田のお見舞い品が、気に入ったみたいで、完成品を1枚見せて貰った。
有名絵画作家の、塗り絵。確か、アールヌーボーの中心的な画家で・・・何って言ったっけ
ああ、そうそう、アルフォンス・ミュシャだったかな。
あの細かいやつを、一箇所一箇所、丁寧に、塗っている。俺に強請った水彩色鉛筆で。
こんな用途になるなら、120色、使いこなせてたってば。
健の24色希望を36色にして買い直したけど。
・・・・・・もちろん、返品なんかしてなくて、健の部屋のデスクにそのままあるよ、120色は。
健の日常は、これから、健自身の居心地の良い様にして欲しいと思う。
その手伝いが出来るならば、この上ない、喜びなんだけど。
「私の、用意した策、聞いてみるつもり、あるか?」
つい、言葉数を減らしてる、俺達の通話は
親父の、意を決したような、でも、濁ったままの戸惑いも混じった、次の重い進言を、俺の耳に届けた。
きっと、この案は、俺にとって、喜ばしいものじゃないってことだけは
聞かなくても、何となく分かった。
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