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”11” 別居を決意する王子 ‐10
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今までの健が戻るのを、皆、待ってる。
俺達を、あったかく包んでくれてる友人諸氏に感謝して、俺は今日が晴れであって良かったって思ってる。
今朝の憂鬱はどこへやら、この善意いっぱいの贈り物を、大切な彼へ届けるのに
晴れたドライブは気持ちが良いからな。
◇◇◇
首都高を東北道に入る頃、運転中とわかってるだろうに、野坂から、しつこいくらいに電話が来た。
何か妙に気になって、一番手前の混むし、通常滅多に来ないPAに寄って、電話をかけなおす。
眠気覚ましの珈琲を買いがてら、コンビニに寄って、
かけて来た割に、やたら呼び出してから、やっと野坂へ通電して。
「どうした?何か準備品が足りないとか?か」
「・・・爽様。今、どの辺までいらっしゃいましたか?」
なんだ?音がくぐもって聞こえる。電波が悪いのかな。
「ん~と。羽生PA。野坂、もっとはっきり話せ。なんか声が遠い」
「・・・は、はい。あ、あの・・・、いや、やっぱりいいです。とにかく1分1秒でもお早くお戻り下さい」
「ん?な、なんか、野坂、変なんだけど。どうかしたのか?」
奥歯に物が挟まったような言い方。本当にらしくなくて、つい険を含んでしまう。
俺の声がそんなだと、大概は、おちゃらけてでも、雰囲気を正そうとする野坂が
そのまま言葉を濁して電話を切ってしまった。
今までの、幸せな気分が、俄に掻き曇り胸騒ぎがする。
な、なにか。何かあったに違いない。
でも、動揺させまいと、敢えて訳を言わなかったんだと思う。
健に、なにか、あったんだ。
直感が、俺に、そう、叫んでた。
けっこうなスピ-ドで、高速を飛ばして、
一般道から那須の山道に入って、とにかく、別荘を目指す。
悠長にバックで駐車なんてことが出来なくて、車を別荘の駐車場に乱雑に停めて、
沢山の健への贈り物はそのままに、俺は別荘までの小道を駆ける。
明かりがついていただけで、少し安堵し、鍵が開いてたドアを引き開けたら。
「は、初めまして!あたし、那須です。あの、七海くんの居候先の・・・」
見たことのない人の良さそうな小奇麗なオバサンが、ポツンとリビングのソファーに座ってた。
俺の姿を見て、直立不動になって、俺に目を剥く。
「えっと・・・あ、はい?え、なんで・・・」
「野坂さんと七海くん、健くんを探しに行ったんです。
夕方、野坂さんが様子を見に来たら健くんがいなくなってて。
居場所、想像つかないかって七海くんに連絡が来て。心当たり探したんですがいなくて。
二人は手分けして周囲を探しに出てくれています。家の中は荒らされた様子もないし・・・・・・」
・・・・・・とっぷりくれた、那須の森の別荘から、健が、消えてた。
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