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”13” 王子、途方にくれる‐1
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side 爽
丹羽家へ電話しようとして、指を止める。
どの面下げて、「健がそっちに行っていませんか?」なんて訊けるんだよ、俺。
キッチンの小窓にライトの光が入り込む。
駐車場に野坂の車が来たんだと、俺と那須未亡人は駆けつけた。
助手席には、久しぶりに見た、あの整った優男顔が少し締まって精悍になってきたアイツの顔。
「どうだったの?見つかった?」
「もう暗くて徒歩で探しても無意味です。明るくなってからじゃないと」
「一旦、お二人は、那須工房にお帰り下さい。送って参りますので爽様は中でお待ち下さい。
もしかしたら、健くんが、あちらを訪ねるつもりなのかもしれないから」
俺を一瞥しただけで、3人で話して、那須さんを連れて帰って行った。
そのひと睨みだけで、「お前な健に何してくれたんだ」的な威圧感を与えて。
監視カメラ、仕込んでおくべきだったって、本気で後悔してるよ、俺だって。
外からしか開けられない様に、鍵も付け替えておくんだったって、臍を噛みたいよ。
そのまま駐車場で、呆けてたら、ものの数十分もかからずに、野坂の車が戻って
俺は平謝りする野坂を、慰めつつ、二人で別荘に戻った。
「朝は、定時にお伺いしましたが、起きて頂けず。体温のみ計らせていただきました。
平熱でいらっしゃいましたし、では、お昼にと思っていたのですが、
生憎、今日は農協関係の来客があって、それが夕刻まで引っ張られてしまいました。
いつもより早めに、伺ったところ、ベッドに寝具がきちんと畳まれて置かれており
クローゼットの中の退院の時のお洋服一式と、お手回り品のバックがございませんでした」
「電話の前に、置いてあった、使ったんだろうな、これ」
タブレットがそこにあって、合成音声ソフトがダウンロードされてた。
こんなこと、今の健に出来た事が驚きだが、多分、これを使ったのなら。
「これで話して、車を呼んだんだと思う。タクシー会社、片っ端から当たろうか。
タブレット置いてってるなら、メモで会話してる筈だし、そんな客、目立つだろ?」
ここまでできるスキルが、今の中学生脳になってる健にあったことが驚きで、
この案を一度打ち消したけど、考えても、これしかないと思った。
「って、ことは徒歩で、出かけられたのじゃないと仰るのですね?
行動範囲がものすごく広くなるじゃないですか……健さまって、賢い子だったのですね」
月曜日は野坂に起こされて、夕方までは時々居眠りしつつ起きてたと本人が言ってたらしいから
きっと、その有り余る独りの時間で、出来るようになったのかな、そうとしか考えられない。
合成音声で読み上げてくれるなら、今後も便利になるもんな、気がついて、そうしたんだろう。
……あ、忘れてた。
「野坂、片っ端からローラー作戦必要ないや」
「え?」
「これ、リダイヤル押したらいいじゃん?」
一先ず、タクシー会社発見。で、野坂は、そっこう聞き込みに走って行った。
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