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”13” 王子、途方にくれる‐4
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深呼吸してから。
出てみることに、してみた。
「やっと繋がったか。おい、お姫様、預かってるぞ。このまま俺が貰っていいのか」
ん?なんだ? 聞き覚えのある声。
誰だ・・・・・・?
◇◇◇
「部屋取ってる。姫はすやすやおねんねしてるから、食われないうちにさっさと来れば?」
日付が変わるギリギリに、俺は嫌味なヤツの声を脳内で反復させながら
横浜港近くの一流ホテルの駐車場から、フロントを目指している。
一直線にフロントへ向かい、目当てのヤツが居なくて、目を巡らせる。
「お客様、ご予約でいらっしゃいましたか?」
「いや、もう部屋は押さえておられます。いらっしゃいませ。お待ちしておりました」
フロントの女性スタッフの声を遮り、背後から声がかかる。
久しぶりに聞いても、嫌味なイケメンボイスに、嫌々ながら踵を返す。
「タワーズラウンジへご案内いたします。こちらへ」
黒の燕尾風な制服を一部の隙も無く着こなした長身の背中を追い、
一緒にエレベーターに乗り込む。
「生憎、空き部屋が、パノラマ・ベイブリッジビューのツインしか無くてね。
少し値が張るが、まあ、お坊ちゃまなら楽勝だろう?」
「うるせぇよ。黙ってさっさと案内しやがれ。っていうか、何で、お前がっ・・・!」
「あ~遊んであげたいのは山々なんだが、こちとら勤務中でね。
転勤したてで肩身が狭いんだから、明けの明日の昼か、ちょうど休憩時間の今か、まで
説明は待っててもらえるかなぁ~。俺、飯まだ食ってないんだよね~。誰かさん待ってたじゃない?
もう残り30分切ってるんだよね~」
エレベーターが専用ラウンジに止まり、軽やかに開く。
「じゃあ、今、しろよ!かいつまんで1分で!」
つかつか目当ての部屋めがけて進み、ヤツはドアにカードキーを滑らせる。
「お客様、どうぞ。大切な方のお誕生日、あと20分弱で終わってしまわれますよ?」
恭しく深い礼をして、部屋を差し示す。
ドアの開閉に気が付いたらしい、部屋の先住民が目を覚まし身じろいだ。
ゆっくり、瞼を擦りながら起き上る小さな身体を、奇跡の様に見つめてしまった。
その隙に、ヤツに、これでもかって勢いで、背中を押され、ポケットにカードキーを突っ込まれ。
前のめりに転びかけて、中に入ると、扉を閉められた。
「ごゆっくりお過ごし下さい。あ!因みに、ルームサービス終了時間もあと20分弱です」
ドア越しに、暢気に、ヤツーー水瀬涼の声がして。
気配は、足早に、離れて行った。
奴の事よりも、目の前の、奇跡が。
一秒も待ってくれないようで、
俺の胸に、駆け寄り、身を投げて来た。
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