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”14” 迷うネコ-2
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水瀬さんが下がって行って、美容師さんが来るまで独りにしてくれた
美容師さんは僕が東京に来てから、羽瑠兄さんの紹介でずっと行ってる所なんだって
僕は、刺された事件から、ずっと髪を切ってない
さっき、佐倉さんに、セックスしてないって言われても心配になって
朝ご飯のやつを下げて貰って、水瀬さんが出てった後で、すぐさま
自分の姿を見るのが、嫌だけど、お風呂の鏡の前に立った
大人の人が着る、ホテルで、その、そういうことのあった後とかに
着てるシーン、ドラマとかでよくある、これって、バスローブって言うんだよね
だから、僕は目覚めた時、パジャマにしては足元がスースーするし
寝間着にしては、襟元が違うしって、探ってみて、
な、なんと、パンツを穿いてなくて
これ、もしかして、僕・・・・・・ってパニックを起こしちゃって
で、隣に誰か寝てる気配があって、こ、この人に何かされたんだ!って思っちゃったら
息が出来なくなってて、死にそうだって思った
腰紐を解いて、前を開けてみる
痩せてて小さい男らしさがない僕の身体に、僕には覚えのない傷が、いっぱいある
これが、刺された後の傷なんだって、百哉さんが言ってた
でも、あるのはそれだけで
エッチなことをした後に、よくついてる赤い小さな丸い痣は、なかった
その痣が出来ることを、僕は、時々、芙柚にされてた
もう、6年も時間が過ぎてて
芙柚は、僕の元には、もういない
身体は、微妙に、前とは感じが変わってて
うん、少しだけ、身体つきが、骨張ってる
筋肉って言うには貧弱だけど、腕とか胸とか・・・なんかしっかりしたような
喉仏も、前よりも、出て来てた
女の子みたいに伸びちゃった長い髪に隠れてるけど
顔も少し、変わったと思う、その、大人っぽくなったような
風貌が変わったって言うの、かな
きっと、今の僕の身体は、もう、女の子に間違われることはない
身長や体重に、多分、変化はないけど・・・・・・そう、思う
女の子の格好をして、お化粧とかそういうのをしちゃえば、まだ間違う人いそうだけど
ノックの音と、水瀬さんの声がして
僕は慌てて前を掻き合わせ、腰紐を結びながら、ドアを開けに向かった
連れて来た美容師の人を見て、僕は、息を吞んだ
「あらァ~健ちゃん、お久しぶり~。御髪が伸びて、女の子ちゃんみたい。
ねね、切っちゃう前に、ドレスとか着ちゃわない~?」
オカマさん?だよね、この人
どっから見ても男の人が、金色のワンピースを着てた
髪の毛はクリムゾンレッドの蛍光色みたいな色で、きれいにブローされてる長い髪
それで、ものすごく、けばけばしいお化粧をしている
こ、怖いタイプの人じゃなかったけど
別の意味で、ちょっと怖くて、近寄りがたいかも
「こんななりでも、超一流らしいです。頑張って、切ってもらって下さい。
私は、退勤して、お買物に行って参りますが、別の女性コンシェルジュを同席させますので」
僕の耳元で、内緒話をして、水瀬さんは出て行った
女性のコンシェルジュさんは、中年のにこにこしてる綺麗な人
凄い恰好をしていた美容師さんは、僕の部屋の普通の机を作業台にして
あっという間に、髪をすっきりと切ってくれた
シャンプーとかトリートメントとかまでしてくれるんだ、すごいよね
あぁ~、頭が軽い~ 気持ちいい~ え・・・?
なに、これ・・・
マッサージを断って、鏡をのぞいたら、
僕の耳に、男のちょっと不良さんがつけてるみたいなピアスが光ってた
「後ろはこんな感じね?健ちゃん、意外に自分の髪型とか無頓着だから、
洗いっぱなしで梳かすだけで、このスタイルはキープできるわよ。
また、切ってあげるから、都内に戻ったら呼んでね。一番は横浜のお店に来て欲しいわ」
美容師さんは何の違和感も持ってないみたい
ずっと・・・・・・ついてたのかな、これ すごく、僕らしくない、こーいうの
ピアスの事とか、僕の知らない間の事とか、出来たらお話ししてって欲しいのに
忙しい人みたいで、すぐに後片付けして帰っちゃった
眼鏡屋さんも、それから、すぐに来て
なんでか、僕の顔に合いそうなのばっかり、持って来てたみたいで
不思議だなって思って、中から、好みのを選んだ
前はふちなしのだったんだけど、高校や大学の僕はどんなのかけてたんだろう
大学の眼鏡は、事件の時に壊れちゃったんだって、佐倉さんが言ってた
今日来てくれた眼鏡屋さんの店舗で、それを僕は買ったらしい
それも、美容師さんのお店の近くなんだって
「横浜の元町ってご存知ですか?私どものお店はそこなんです。
丹羽家の皆様には、ご贔屓にしていただいています。
前の物もとてもお似合いでしたから、残念です」
無難な、メタルフレームの細みのやつにした
なんでか、佐倉さんが、似合うって言ってくれるかなってのが、気になった
この不良さんピアスと、感じが似てて、しっくり来たんだ
今日から視界が良好になる、確かに少し不便だった、よくぶつかったりしたもんね
ベイブリッジも、曇りで、雨が落ちて来そうな色で遠くまで見通せないのに
クリアーに急に見えるから、面食らう
後は、お洋服と、野坂さんのお迎えが来ればいいんだ
・・・・・・ってことは、大学に行った佐倉さんは、今日はもう会えないのかな
新しい眼鏡と髪型、感想、聞きたかったな
◇◇◇◇◇
ガタゴト、玄関で音がする
僕は、阿川さんのくれた、けっこう怖いホラー小説を、
お行儀悪いけどベッドに寝そべって、ドキドキしながら読んでいたから
ちょっとびっくりして、叫んじゃった
まだ、やっぱり、変な声
あの日、帰って来て、野坂さんがテレビ電話に自分の携帯でしてくれたので
佐倉さんのお顔を見て話をした
佐倉さんはそのまましゃべって、僕は画面にタブレットを翳してお話
その時、佐倉さんが言ったんだ
「健、もう、声が出る筈だから、週末顔出す時まで、少しずつでも声を出す練習して
俺と1時間お喋りすること。宿題だよ?」って
どうして、バレたんだろう
ちょっと声が出せるようになってたの、内緒にしてたのに
でも、かすかすで変なんだ、話さなくて済むなら、話したいことなんかなかったから
言葉を操ったって、気持ちなんか届かないんだって、僕は思う
僕は、一生懸命、叫んだし、
アイツらに、やめてって、許してって言ったんだ でも、きいてくれなかった
助けてっても、言った でも、誰も、助けに来てくれなかった
携帯電話もポケットからどこかへ行っちゃった
本当に必要な時、役に立たないなら、いらない、声なんか
佐倉さんは、話さなくても、話しても、
なんだかいつも悲しそうで、僕って、無意味なんだなって
もっと、僕の知らない僕を、教えて欲しいのに
あの人、教えるのは嫌みたい
仲、悪かったの? でも、僕の好みをちゃんと知ってる人だよね?
眼鏡だって、髪型だって、僕の好きなのに出来たんだってことは
佐倉さんが、手配したからじゃないのかな?
「健さま~!また、いなくなったりしてませんよね~!!
どこですか~、顔出して下さい~!」
いけない、思いに浸っちゃった
野坂さんが心配するから行かなきゃ!
今日は金曜日
いつもより野坂さんは早く別荘にやって来た
食材をいっぱい抱えて
普段は、僕、一人のご飯か、時々、野坂さんが一緒に食べてくれるかで
金曜の今日、1週間分買い込んで来ててくれれば、十分
金曜の夕ご飯から、月曜の朝ご飯まで
佐倉さんと、ご飯が食べられる日
厳密に言うと、月曜の朝ご飯は、一緒の内容を後で食べてるだけ
学校に間に合う時間に行かなきゃいけない、早朝に出てしまうから、
お弁当を持ってってもらう、それが朝ご飯
メニューのリクエストがあるから、早く取り掛からなきゃ
お祖母ちゃんのお得意メニュー 手羽と大根の煮物
簡単だけど、味がしみ込むようにことこと煮こまなきゃいけない
佐倉さんは、不思議だけど、変な人でもあって
モデルさん張りにかっこいい、現代風の容貌なのに
けっこう、田舎臭いというか、地味というか、平凡というか
ありきたりな、煮物とか焼き物とか汁物とかが大好き
先週末なんか、お腹空いた早く食べたいって言いだして、大慌てで作った
豚の生姜焼きなんかくらいで、美味しいって、じーんって、涙ぐんでた
お味噌汁も、若布とお麩だけの具なのに、おかわりしたもんね
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