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”16” ネコの憂い ‐3
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日曜日は、雨まで行くか行かないかくらいの薄い曇り空
でも、梅雨だから油断できないねって、傘を持って出た
なんだか、佐倉さんの傘と僕の傘は、色違いの同じに見える
訊こうかなって思ったけど、佐倉さんが、あのお決まりの悲しい表情をしたから、止めた
お弁当は荷物になるから、お昼までかかるなら向こうで買って食べよって
お買い物は楽しくて、佐倉さんは、困った人で
僕が選んでる側から、僕の身体に勝手に合わせて、似合うと買ってしまう
横山くん達には、パンツにしようって言い出されたり、自分のもパンツがいいとか欲しがるし
流石に、佐倉さんにパンツ1枚はないから、「お~これ、面白くていい!」って手に取ったTシャツと
珍妙な柄を大笑いしてた靴下も追加したけど、大した額まで行かなくて
「じゃあ、これ。色違いのお揃いに買おうよ。別荘で夏に履こう?」ってカジュアルな軽いサンダルを買った
佐倉さんのプレゼントのお返しなのに、僕の分のサンダルも含めてどうする気なんだろう
どうしてだか、佐倉さんが時々、ビックリしてるのが声に出さなくてもわかって
何に、ビックリしているんですか?って、訊いてみたいのに
でも、訊いたら、また、あの悲しい顔かなと思うと、勇気が萎えた
僕の欲しかった物は、そこにはなくて
チーズ屋さんには当然、文具店にはもしかしたらって思ったのだけど、なかった
ネットでのお買い物の仕方、帰ったら教えてくれるって
それで、探してみようって思った
僕の欲しかったのは、楽譜で
東京でも扱ってる本屋さんやお店も、そんなに多くはなかったって思い出す
今は、インターネットで本を買ったり、データーだけ買ってタブレットで読んだりするんだもんね
きっと、買えるね、僕の小学生くらいに弾いた曲くらいの難易度に下げれば、指慣らしを続けたら
また、素人よりちょっと上くらいの、ピアノを弾くことが出来るかもしれない
何だっけ、お祖母ちゃんが教えてくれて、よく言ってた諺
そう、「雀百まで踊りを忘れず」だ 微妙に意味が違うって笑ってた
僕は小さな生き物でも、得意なことは忘れにくいって意味だと勘違いしてて
あんまり、いい意味じゃなかったことを、ちょっとがっかりしたんだ
文具店の帰り、郵便局のキャッシュディスペンサーは空いていて
「戸口にいるね」って佐倉さんは、一緒に入らないで待っててくれた
僕とお祖母ちゃんは、パパさんに隠れて、こつこつヘソクリをしてた
その口座が郵便局だったような気がするんだよね
で、暗証番号は、二人が絶対忘れない、お母さんのお誕生日
でも、通帳もカードも持ってたのは、お祖母ちゃんの筈
カードは吸い込まれてくれた さっき、多めにしなって佐倉さんのアドバイスで、いっぱい下ろした、お金
ネット通販で買い物するなら、カードでも払えるけど代引きでもいいでしょって、確かにそうかも
カードの番号が違ったら、通帳と届出印を調べて、手続きをすれば再発行してくれるって教えてもらってる
だから、ダメ元で、暗証番号を入れてみた
えっ・・・・・・通ってる!? し、しかもっ
「な、に、これ・・・・・・」って残高の紙を見て絶句
試しに引き出し金額を1万円でしたら、残高が9を頭にした7桁の数字
ぼ、僕はお金には困ってないんだって、すごく良くわかった
帰ってからちょっとお財布に入れておくのが怖くなって、パパさんから貰った時計のケースに入れておいた
ヘソクリ普通預金口座に、こ、こんな大金、どうしてなんだろう
出かける前に下準備をしておいたから、夕御飯の支度は手間じゃない
だから、なのかな
リビングのソファーで大学の勉強をしてる佐倉さんにばかり、目が行ってしまう
少しだけ蒸し暑かったりするから、献立は簡単にお素麺
麺つゆも箸休めの翡翠茄子も、キャベツの浅漬けもお出かけ前に作って冷蔵庫の中
たっぷりのお湯を沸かす間、薬味の葱や大葉や胡瓜や茗荷を刻んだり、
錦糸卵を作ったりはするけど、二人前のそれはすぐに出来ちゃって
あ、いけない、またぼんやり、見つめちゃってた
僕の視線があからさまで、気がついちゃったみたいで、ばちっと目が合ってしまった
ど、どうしよう・・・なんか、すっごく恥ずかしい
「もしかして、もう御飯食べれるとか?帰って1時間も経ってないのに」
「お、しょ、うめん、らから。うでると、すぐ」
「さっすが、もう、食べちゃう?あ、少し早いか。じゃあ、俺、風呂入ってこようかな。
一緒に入る?もう、終わりなんでしょ?」
と、とんでもないって、僕は首をブンブン横に振る
あ、わざとだ! 笑ってるもん~ 僕が困るだろうなってわざと言ったんだ
「むくれて可愛いな~。じゃあ、お先に頂きま~す」
温泉で、かけ流しのお風呂は、日に一度お湯を全部抜いて洗うけど
佐倉さんが来た時以外は、面倒だし内湯だけ管理してる
金曜日、うっかりしてて露天のお風呂溜めてなかったら、二人だし内湯だけでいいかって
もう少し夏になって、夏休みになったら、佐倉さんが毎日ちゃんとお掃除して両方入ろうねって
佐倉さんって、同じ年なのに、どうして、そんなに気遣いが出来て、大人なんだろう
僕は、ちゃんと追いついて、あなたの隣にいたのかな?
何度も、今までの僕を思い返してる素振りや、思い出しててする発言を
悲しそうに収めてしまうけれど、僕達は、どんな二人だったの?
いけない、また、二人でいられる時に、こんな風に考えるのよそうって思ってたのに
マイナス思考は、敵 良い事は何も生まない、わかってるんだ、僕
お風呂場から、奇声?が聞こえて、何が起こったのってビックリしてると
「ちょっと~健、見てこれ、めっちゃ可愛いデザインだったね~
ハートの中にネズミがいるんだよ、見て見て~」
今度は僕が奇声ならぬ、悲鳴をあげる
佐倉さんが、パンツ一枚で、リビングに帰って来ちゃった!
は、は、裸同然だって、そんな格好で~
「ん?これ、今日、健が買ってくれたんじゃん。お披露目しに来たんだけど」
ビックリして、し過ぎて、手に持ってたお素麺の束を床にぶちまけちゃった
い、一緒に拾ってくれるよりも、お洋服、お洋服着て来て、く、下さ~い
目のやり場に困る 困っちゃうってば~
背が高くて細身だけど締まった体つきだなって、思って、今日も見てた背中
筋肉が自然に綺麗についたしなやかな身体、すごく男の人らしくて
見ないようにしてるのに、どうしても盗み見てしまう
お洋服着てくださいお願いしますって、言ったら、パンツ見せたかったんだってって
男の人の、その、大切な膨らみの部分とか平気で指差して
ハートがところどころよく見るとネズミのシルエットになってるんだって熱弁する
困って、困り果てて、僕はキッチンの床に両手で顔を隠して小さくなった
「え~そんなに醜いもの見せちゃったか~、ごめんね~。お!これってお揚げ煮てる?」
「あ、そ、しょれ、火、とめれ、くらさっぃ!」
「はいはい。もう、わかったから服着てくればいいんでしょ~。続きをよろしくお願いしま~す」
足音が遠ざかってくのに、ホッとして、目を開け、佐倉さんの消えた方を見る
背筋も綺麗についてた、お尻もキュッて上がってて、
肌は健康的で焼いてないのに、僕よりも黒っぽい色
背中に残ってた拭き残しの雫も、な、なんか、セクシーで
せ、セクシーって、何考えて・・・・・・あ、ウソ
ぼ、僕のモノまで、ビックリしたみたいに、少し、反応してた
三日間のことを思い出してて、何故か最後にここに行き着いて
ひゃ~、ぼ、僕はなんて、ところで、現実の独りのリビングに回想風景を止めて戻しちゃうんだって
佐倉さんって、彼女とかいるのかな
あんなかっこよくて、は、裸もセクシーで・・・・・・いるよ、ね
こんな僕にだって、指輪の誰かがいるんだもの
相変わらず、会いには来てくれないんだけれど、ね
佐倉さんほどの、素敵な人の想い人を思うと、ぎゅっと胸が痛い
僕なんかに関わって、その人を泣かせてたりしないかなって思うから、なのかな
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