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”18” ネコへの手紙-6
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お祖母ちゃんは、やっぱり、すごい人だった
僕は、ううん、僕達は誰にも気付かれていないと信じて疑わなかった
健はずっと、僕を、健だけに見える双子のお兄ちゃんだって、思ってくれていた
僕も、そうだと思って、いつでも、健の最高のお兄ちゃんでいたかった
健が、健だけ、健を、健だから・・・・・・
でも、心の底では、羨ましかった
お祖母ちゃんに、孫として、愛されたかった
誰よりも、一番に、思われたかった
きっと、生涯の最後の手紙を
お祖母ちゃんは、僕に、くれた・・・・・・
健に、じゃなく、僕に
涙は止めようもなかった
だから、せめて、声だけは堪えようって思った
窒息寸前まで、タオルで口を塞いで、音を出さないように
どうして
前は出来てたのに
息継ぎで、タオルをはずしたら、嗚咽が零れてしまう
か、かっこわる・・・いっ
もう一度、押し付けようとしたタオルが
あれれ、宙に浮いて
・・・・・・俯いてた視界に影が差した
「これ交換しようか。それと、これも。静さんの代理ね?」
やわらかく僕を抱きしめてくれる佐倉さん腕の中で
ほわほわのいい匂いのするタオルを代わりに貰ってた
「泣き顔、見ないから。 ただ、おまじないだけさせて下さい」
佐倉さんの現れたドアからは
なにか美味しそうな甘い匂いがしてた
きっと、お昼をお誘いに来てくれたのかもしれない
詰まってた鼻水を啜った、一瞬
さらに他の、すごく爽やかな、落ち着く香りが鼻腔を擽る
ああ、これは佐倉さんの匂い
僕の・・・・・・
「カオル君?え?カオル君?どうしたの?」
背中をアンダンテのリズムで
温かくて大きな手が優しく叩いてくれる
僕は、赤ちゃんみたいに安心して、いつの間にか眠って、た
◇◇◇◇◇
あ、今朝は、トースト
「気持ちは解るけどね、良くないと思うんだ。一人の間、けっこう、1食っての多かったでしょ?
だから、今日は頑張って3食きちんと取ろうね」
次々、手渡されるお皿とかをダイニングテーブルに運ぶ
でも、目玉焼きだ あれ?オムレツじゃないんだ
「卵、今朝、2個しかなかった。昨日、ホットケーキ作った時にさ。あ、在庫切れるや。
ま、いっか~お昼食べて、カオル君が落ち着いたら買い出しに行こうって思ってたのにさ。
まさか、あれから、まったく起きないんだもん。また、眠り姫になっちゃったかって焦った」
買い出し、1パック頼んだ筈だから・・・二日じゃなくならないと思うんだけど
一日8個も、どんな使い方したんだろう、佐倉さん
僕は、あれから、泣き疲れて眠ってしまって、何度も、佐倉さんが起こしたのに起きなくて
なんだか、すごく、心配かけちゃったみたい
今朝、点々の無精ひげの、ちょっとカッコ悪い佐倉さんが、僕のベッド脇で椅子に座ったまま
僕のベッドに上半身だけ乗り上げて、眠り込んでいて
僕、起き上がって、呼びかけたんだけど、起きる気配がなくて
眼鏡、いつの間にか、片付けられちゃってて、見えないから顔を近づけて
大丈夫かなって、覗きこんだら、ぱちって音がしそうなくらい急に、
綺麗な二重のはっきり大きく涼しげで優しげな眼が開いた
その急な目覚めに、心臓、止るかと思った
そしたら、垂れ目の目元が色っぽい佐倉さんが、心からホッとしたみたいに笑った
「あ~起きてくれてよかった。おはよう、カオル君」
うつ伏せてた上半身を、えいって上げて、思いっきり欠伸と伸びを同時にして
ビックリして身を引いた僕を、伸ばした両腕で肩を押して、また横たえてくれて
「シャワーして、朝飯作って来るね。カオル君は、君のタイミングで着替えてリビングにおいで」
また、僕はいつの間にかパジャマに着替えてて
顔も涙やら鼻水やらですごくなってただろうに、きれいになってた
僕のタイミングってことは、シャワーしたり身支度したりしていいってことかな
で、甘えて、今朝も、作ってもらってしまった、朝ご飯
サクッと、いい音がする しかも!
「うわ~おいし~い!」
「でしょ~。やってみたら、美味しいね。ジャム先トースト」
「お行儀悪いけど、こっちも食べよう。 あ、マーマレードも美味しい~」
厚切りの食パンだと1枚食べるのがやっとな僕には、
苺とマーマーレードのトーストを、それぞれ半分ずつに切ってくれて
佐倉さんは、僕の残ったのと、別にもう一枚、そっちはバターだけ
バターとジャムを先に塗って、それからトースターで焼くと、ジャムが濃くしっとりして熱々
ネットで見て、やってみたかったんだけど、マンションのは、ポップアップだから出来なかったんだって
本当に佐倉さんって、研究熱心な人だと思う
目玉焼きは半熟で、サラダはレタスをちぎったのとプチトマトの半分に切ったの、
カットバナナが入った蜂蜜がけのヨーグルト
時間なかったし、今朝はスープなしで簡単にねって、照れてたけど
僕と一緒の、カフェオレを飲んで、にこにこしてる
キッチンに現れた僕が、開口一番、昨日のご迷惑を謝ろうとしたら
即、唇に指をあてられて、「ごめんはいらないよ」って言われてしまって
はい、って、朝ご飯のお皿をテーブルに持って行ってって渡された
それから、こんな感じで、昨日以上にのんびりで、ほっこりする朝ご飯タイム
謝らなくちゃいけないこと・・・・・・
もっと、結構すごいのを、僕は、どうしたものかって、考えながら
今、このひと時だけは、穏やかな朝ご飯を食べたいって、我儘に思ってる
僕が、いっぱい眠ってしまったのには、理由があるんです
って、この人に告げたら
悲しませる、すごく、悲しませてしまう
でも、もしも神様がいて、僕を許すなら
・・・・・・幸せな今だけ、どうか、忘れさせて下さい
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